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お役立ち情報

労働保険の年度更新

このお役立ち情報のポイント

  1. 労働保険の概要に関して確認しましょう。
  2. 労働保険の年度更新について理解しましょう。
  3. 更新手続きの時期に慌てないためにも事前に、そして早めに準備をしておきましょう。

労働保険の年度更新の時期がやってきました。毎年3月支給までの直近1年間の賃金総額を基に、労働保険の年度更新の準備を進めていきましょう。こちらの記事では、労働保険(雇用保険+労災保険)の年度更新の準備に必要な知識をご紹介します。

労働保険とは

労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」を総称した保険をいいます。

労働保険 労災保険 就業中や通勤中の事故、ケガに対する療養・休業・障害・死亡についての給付。
労災保険料は、全額事業主負担となります。
雇用保険 労働者の失業や、雇用が困となったときの労働者の生活や雇用の安定を維持するための給付、また再雇用の支援や給付。雇用保険の保険料は、事業主と労働者それぞれの負担となります。

労災保険も雇用保険も、労働者を1人でも雇用する事業所はすべて「強制適用事業所」となり、保険への加入が義務付けられています。労災保険の場合、対象労働者は正社員、パートタイム労働者などの雇用形態に関わらず、雇用され、賃金が支払われている者すべてを指します。雇用保険においては短時間労働者で一定条件を満たさない労働者は、雇用保険の対象とならない場合もあります。

※会社経営における各保険の「適用事業所」の詳細は「お役立ち情報:保険適用事業とは」をご参照下さい。
※阪神労働保険事務センターで行ってる主な労働保険の手続きは「業務内容:労働保険・社会保険手続き」よりご参照下さい。

労災保険のイメージ

労働保険の年度更新

労働保険の「年度更新」とは何だろう?という方へご説明をしますと、まず労働保険は労働者に支払った賃金総額をもとに算出されるという前提があります。ここでいう賃金総額とは4月~翌3月までの賃金の総額となります。※労働保険法における賃金に含まれるもの/含まれないものについては別ページ「お役立ち情報:賃金・報酬」をご参照下さい。

算出された賃金総額を基に、保険料の申告と納付を行うことを労働保険の「年度更新(手続き名)」といいます。労働保険に加入している、つまり労働者が1人でもいる限り、毎年更新手続きが必要となります。

労働保険料の算出方法のここがポイント!

ポイントは3つあります。

1つ目は、原則、令和5年度の更新分については、令和4年4月~令和5年3月までの賃金総額を基に、

  1. 令和4年4月~令和5年3月までの確定保険料(確定清算分)
  2. 令和5年4月~令和6年3月までの概算保険料(仮払保険料

上記の2つを加算した保険料となります。
では具体的にどのように計算していくのかをご説明します。

令和4年度に納付した保険料の中には、令和3年4月~令和4年3月までの確定保険料の支払い令和4年4月~令和5年3月までの概算保険料の仮払い(①)が含まれています。そして令和5年度に納付するべき保険料の中には 令和4年4月~令和5年3月までの確定保険料の支払い(②)と令和5年4月~令和6年3月までの概算保険料の仮払いが含まれています。

この2年度間で
①令和4年4月~令和5年3月までの概算保険料(令和4年度概算保険料)
②令和4年4月~令和5年3月までの確定保険料(令和4年度確定保険料)
の2つの労働保険料の期間が重複しているのがわかります。つまり①と②の労働保険料を相殺するように計算することが必要となります。例えば①概算保険料10万円(下図の赤い四角右半分)、②確定保険料15万円(下図の緑の四角左半分)だったとしましょう。令和4年度の実際の賃金の支払い額が、令和4年度当初で予想したよりも多かったということになります。この場合には、15万円ー10万円=5万円を令和4年度分の確定保険料として納付することになります。

さらに、原則として令和4年度の確定保険料=令和5年度の概算保険料となりますので、上記例を用いれば、令和5年度の概算保険料は15万円となります。つまり令和5年度で納付する労働保険料は令和4年度確定保険料5万円+令和5年度概算保険料15万円=20万円となります。このように、毎年順々に計算していきます。

2つ目が、賃金総額の見込み額が前年度よりも大幅に変動する予定の場合、例えば賃金総額見込み額が2分の1未満または2倍を超える場合、見込み額から概算保険料を算出します。

3つ目が、建設業の場合は、賃金総額の代わりに請負金額や労務費率を用いて算出します。

保険料の計算のイメージ

労働保険料率

労働保険料は、労災保険・雇用保険それぞれで負担方法と保険料率が異なります。それぞれについてみていきましょう。

労災保険

労災保険料は、全額事業主負担となります。つまり従業員の負担はゼロということになります。事業の種類により適用される労災保険料率は異なります。令和5年度の労災保険料は令和4年度から変更はありません。詳細については、厚生労働省発行の令和4年度の労災保険料率表をご参照ください。

雇用保険

雇用保険の保険料は、事業主と労働者それぞれの負担となります。雇用保険被保険者である労働者の毎月の賃金からの控除となります。

雇用保険料率のここがポイント!

令和4年度は例年とは異なり、2段階での料率引上げとなりましたが、令和5年度は4月からの引き上げ料率が1年間適用されます。

以下、厚生労働省発行の雇用保険料率の表抜粋となります。
※赤字は前年から変更となった箇所です。

●令和5年度の雇用保険料率

①労働者負担(失業等給付・育児休業給付の保険料率のみ) ②事業主負担   ①+②
雇用保険料率
失業等給付・育児休業給付
の保険料率
雇用保険二事業
の保険料率
一般の事業 6/1,000 9.5/1,000 6/1,000 3.5/1,000 15.5/1,000
(令和4年10月~) 5/1,000 8.5/1,000 5/1,000 3.5/1,000 13.5/1,000
農林水産・※
清酒製造の事業
7/1,000 10.5/1,000 7/1,000 3.5/1,000 17.5/1,000
(令和4年10月~) 6/1,000 9.5/1,000 6/1,000 3.5/1,000 15.5/1,000
建設の事業 7/1,000 11.5/1,000 7/1,000 4.5/1,000 18.5/1,000
(令和4年10月~) 6/1,000 10.5/1,000 6/1,000 4.5/1,000 16.5/1,000

一般拠出金

一般拠出金とは、石綿(アスベスト)による健康被害を受けた方々への救済費用にあてる費用のことで、事業主が負担する保険料となります。労災保険適用事業場となるすべての事業場が対象で支払い義務があります。令和5年度の一般拠出金率は1000分の0.02となります。

労働保険料率のイメージ

年度更新期間について

令和5年度の労働保険の年度更新期間は、令和5年6月1日~7月10日となります。
年度更新手続きに遅延が発生した場合、追徴金(ペナルティ)が発生する場合もあります。追徴金は確定保険料の10%となります。(概算保険料には追徴金なし)ご注意ください。

年度更新手続きの流れ

労働保険の年度更新は以下の流れで手続きを行います。

  1. 毎年5月下旬頃に年度更新・申告書類一式が届きます。
  2. 「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」(略:賃金集計表)を作成します。
    労働保険法における賃金に含まれるもの/含まれないものについては、以下の表をご確認下さい。
                                                       
賃金とされるもの 賃金とされないもの
1.基本給(固定給)、深夜手当、時間外手当、休日手当、宿直・日直手当
2.扶養手当、家族手当、皆勤手当、技術手当、職階手当、能率給、能力給
3.遡って昇給した賃金
4.有給休暇日の給与
5.就業規則、労働契約等であらかじめ定めがあり、支給条件が明確なもの、事業主を経由したチップ、毎払い退職金(在職中に給与に上乗せ支給する退職金) 5.結婚祝い金、死亡弔慰金、災害・療養・出産見舞金、退職手当、チップ・祝祭日などに特別に支給される給与等(A)
6.一定額の均衡給与が支給されている場合の住宅手当相当額、物価手当、食事、被服、住居の利益 6.一定額の均衡給与が支給されていない場合の住宅の貸与(B)
7.労働者が負担すべき所得税、社会保険料を事業主が変わって負担する部分 7.生命保険料の補助金、財産形成貯蓄奨励金等(B)
8.通勤手当 8.出張費、業務遂行に必要な作業用品など (C)
9.労働基準法第26条に基づく休業手当 9.労働基準法第76条に基づく休業補償費、解雇予告手当(A)
10.年4回以上の賞与 10.3か月を超える期間ごとに受ける賞与・臨時に支払われる賞与(A)
11.海外手当、在外手当(A)
12.残業した際などにたまたま支給された夜食(A)
13.離職後に支払われた未払い賃金 13.離職後に決定された給与(昇給含み)及び賞与(A)
14.単身赴任手当、勤務地手当、転勤休暇手当、受験手当(実質弁償的でないもの) 14.赴任手当、移転料、寝具・工具手当、車の損料(C)

また、賃金を集計する際に含める人、含めない人がどのような雇用形態の人なのか以下の表でご確認下さい。

労災保険・雇用保険における賃金の取り扱い
  労災保険 雇用保険
短時間労働者の賃金(パート・アルバイト) 全て集計に含める 以下の要件を満たせば被保険者となり、全ての集計に含める
  • 31日以上の雇用見込みがある
  • 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である
  • ※昼間学生は除く。その他例外あり。
派遣労働者の賃金 派遣先では集計に含めない
法人の役員の報酬 集計に含めない
※事実上、労働者性が認められるなどの場合は集計に含める。その場合、「役員報酬」は含めず労働者としての「賃金」の部分のみ算入する。
事業主と同居する家族従事者の賃金 集計に含めない
※就業実態が他の労働者と同様の場合等は集計に含める。なお、労災保険の方が労働者となるか否かの判断が厳しい。
出向者の賃金 出向先での集計に含める 生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける会社で被保険者となり、集計に含める
通勤交通費 集計に含める(出張旅費など実費弁償分は含めない)
賞与 集計に含める
  1. 「労働保険 概算・増加概算・確定保険料 石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」(略:保険料申告書)の記入・作成を行います。
    ※申告書の書き方については厚生労働省のHPをご参照下さい。
  2. 保険料申告書を提出します。
  3. 保険料の納付を行います。

この手続きの流れに沿って行いますが、年度更新期間内に申告書の提出、保険料の納付が完了出来るように、事前に、そして早めに準備を行っていきましょう。

最後に

多くの会社で年度初めは社員の入れ替わりによる諸手続き等の業務が多くなり、人事総務の方々はてんやわんやの季節になります。やっと一段落したと思いきや、すぐに労働保険の年度更新手続きがやってきて、また更に目まぐるしく対応に追われてしまう、なんてこともあるのではないでしょうか。

更新手続きの時期に慌てないためにも、労働保険の年度更新に関して理解を深め、その時期になる前から着々と準備を始めていくことをおすすめします。弊社は労働保険事務組合も併設しているため、煩わしい労働保険の年度更新手続きを全て一括してお受けしております。

労働保険・社会保険手続きや人事労務管理等に関するご相談などお気軽にお問い合わせ下さい。

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