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お役立ち情報

社会保険の定時決定(算定基礎届)

このお役立ち情報のポイント

  1. 社会保険の概要、社会保険料について確認しましょう。
  2. 社会保険料を決める標準報酬月額の定時決定の方法について確認しましょう。
  3. スムーズに定時決定を行い、算定基礎届の提出を遅延や誤りのないように行いましょう。

社会保険とは

概要

社会保険とは会社で働く労働者を対象として、主に健康保険、厚生年金保険等を総称した保険制度です。そして健康保険とは業務外の病気や怪我の治療、出産に関わる費用などを保険給付する制度であり、厚生年金保険とは公的な年金制度で、加入期間や報酬により基礎年金である国民年金に上乗せされる年金制度のための保険です。社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は事業主と労働者それぞれ折半での負担となります。 労働者負担分の保険料は、 社会保険被保険者である労働者の毎月の賃金からの控除となります。 ※社会保険の被保険者の種類と要件に関する詳細は「お役立ち情報:被保険者の範囲」をご参照下さい。

適用事業所

社会保険(健康保険・厚生年金)の適用事業所は、下記のフローチャートによって強制適用事業所か任意適用事業所かを判断することができます。

社会保険の適用事業所

このフローチャートの左上の「個人事業主であるか」という質問からスタートして該当するかしないかでチャートを進んでいただくと強制適用事業所か任意適用事業所かが判断でき、強制適用事業所となる場合には法律によってその保険への加入が義務付けらます。※非適用業種の詳細及び適用事業所に関する詳しい内容は「お役立ち情報:保険適用事業とは」をご参照下さい。

社会保険の被保険者

社会保険料の算出方法

標準報酬月額とは

社会保険料の話をする上でよく耳にする言葉が「標準報酬月額」です。「標準報酬月額」とは、社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)の計算の基礎となる社会保険上の等級を決定するために従業員の月々の給料によって算出したもので、健康保険の場合は1~50の等級、厚生年金の場合は1~32の等級によって各保険料が決定します。

社会保険料率

「標準報酬月額」によって決定された等級別に決められた社会保険料を支払うことになりますが、事業主と労働者がそれぞれ支払う金額を決定するための社会保険料率は、各都道府県別に設定されています。詳細は、協会けんぽの令和4年度保険料額表をご参照ください。

社会保険の定時決定(算定基礎届)とは

定時決定と算定基礎届

「定時決定」とは、社会保険料を算出するための標準報酬月額と労働者の実際の報酬に大きく差がでないよう、労働者に4~6月の期間実際に支給した賃金を基に、9月~翌8月までの標準報酬月額(等級)を決定するための諸手続きのことをいいます。そして定時決定によって算出された標準報酬月額を届け出ることを「算定基礎届」といいます。「定時決定」及び「算定基礎届」は毎年7月に行われ、決められた提出期間内に提出する必要があります。

算定基礎届の提出期間

算定基礎届の提出期間は、原則毎年7月1日~7月10日までとなります。
※10日が土曜または日曜の場合は翌営業日が提出期限となります。
事務センターもしくは管轄の年金事務所へ、電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口への持参によって提出します。

定時決定手続きの流れ

定時決定から算定基礎届の提出までの流れを紹介します。1~6までのステップに沿ってご確認下さい。

算定基礎届に関する書類一式を受け取る

毎年6月頃に算定基礎届に関する書類一式が届きます。届け出先を顧問社会保険労務士に指定している場合には、直接、社会保険労務士事務所に届きます。

算定対象者の確認

算定基礎届の提出の対象となる労働者は「7月1日時点で会社に雇用されている全ての従業員」となります。ただし、以下の場合には算定基礎届の提出は不要となります。

  • 6月1日~7月1日に資格取得した被保険者
  • 6月30日以前に退職した方
  • 7~9月に随時改定(月額変更届)が予定されている被保険者

随時改定は、現在の標準報酬月額と2等級以上の差が生じた場合に行われます。随時改定の方が定時決定よりも優先されるため、定時決定の標準報酬月額が適用される9月までに随時改定が行われる場合は定時決定は対象外となり、随時改定での標準報酬月額が適用されかたちとなります。ここで注意したいのが昇給または降給があるからといって、随時改定が必要であり、算定対象外と安易に考えてしまうのは間違いです。随時改定が起こるのは、あくまで2等級差が生じた場合となりますので、その労働者の等級を確認し、随時改定の対象となるのかきちんとした確認が必要です。2等級差以内に収まった昇給、降給の場合には算定対象者となる可能性があります。※随時決定に関する詳細は協会けんぽの随時改定(月額変更届)をご参照下さい。

4月~6月に実際に支払った賃金の確認

算定対象となる労働者の4~6月の賃金を確認します。具体的に賃金に含まれるか、含まれないかは、以下の表でご確認ください。

                                                       
賃金とされるもの 賃金とされないもの
1.基本給(固定給)、深夜手当、時間外手当、休日手当、宿直・日直手当
2.扶養手当、家族手当、皆勤手当、技術手当、職階手当、能率給、能力給
3.遡って昇給した賃金
4.有給休暇日の給与
5.就業規則、労働契約等であらかじめ定めがあり、支給条件が明確なもの、事業主を経由したチップ、毎払い退職金(在職中に給与に上乗せ支給する退職金) 5.結婚祝い金、死亡弔慰金、災害・療養・出産見舞金、退職手当、チップ・祝祭日などに特別に支給される給与等(A)
6.一定額の均衡給与が支給されている場合の住宅手当相当額、物価手当、食事、被服、住居の利益 6.一定額の均衡給与が支給されていない場合の住宅の貸与(B)
7.労働者が負担すべき所得税、社会保険料を事業主が変わって負担する部分 7.生命保険料の補助金、財産形成貯蓄奨励金等(B)
8.通勤手当 8.出張費、業務遂行に必要な作業用品など (C)
9.労働基準法第26条に基づく休業手当 9.労働基準法第76条に基づく休業補償費、解雇予告手当(A)
10.年4回以上の賞与 10.3か月を超える期間ごとに受ける賞与・臨時に支払われる賞与(A)
11.海外手当、在外手当(A)
12.残業した際などにたまたま支給された夜食(A)
13.離職後に支払われた未払い賃金 13.離職後に決定された給与(昇給含み)及び賞与(A)
14.単身赴任手当、勤務地手当、転勤休暇手当、受験手当(実質弁償的でないもの) 14.赴任手当、移転料、寝具・工具手当、車の損料(C)

ここで注意したいのが、4~6月に受ける報酬とは「現実に支給された月」を基準とするものであり、例えば会社の給料の支払い日が月末締めの翌月15日払いであった場合、「4月分の給料」というのは、社会保険の定時決定における「4月の給料」にはなりません。4月1日~4月末日までに労働を行った分の報酬は翌月5月15日に支払われるので、社会保険の定時決定の場合の算定基礎月である「5月の給料」として取り扱われます。

4~6月の支払基礎日数の確認

「支払基礎日数」とは、月の報酬額を決定するときにその計算の基礎となった日数のことをいいます。具体的には月給者の場合には各月の歴日数となり、日給月給制で欠勤がある場合には、就業規則等に基づき、所定日数から欠勤日数を引いた日数、日給者の場合には、各月の出勤日数となります。
4~6月の各月の支払基礎日数は原則17日以上となります。17日未満の場合の報酬月額は通常の月とかけ離れる可能性があるため、算定基礎届の際には対象外となります。

4分の3基準を満たす(週30時間以上)の短時間労働者の場合は、以下のように支払基礎日数によって報酬月額平均額の算定方法が異なります。

  • 4月・5月・6月全ての支払基礎日数が17日以上の場合
    ⇒3か月の報酬月額の平均額
  • 4月・5月・6月のうち1か月でも支払基礎日数が17日以上の月がある場合
    ⇒報酬支払基礎日数が17日以上である月の報酬月額の平均額(17日未満の月を除いて算定)
  • 4月・5月・6月全ての支払基礎日数が17日未満である場合
    ⇒報酬支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額
  • 4月・5月・6月全ての支払基礎日数が15日未満である場合
    ⇒従前の報酬月額を用いる

特定4分の3被保険者(週30時間未満・特定事業所)の短時間労働者の場合は、支払基礎日数が11日以上で算定することとなります。

4~6月の報酬平均額の計算

支払基礎日数のルールを満たす月の賃金総額を月数で割り報酬平均額を算出します。そして標準報酬月額から社会保険の等級を決定します。これらは事業所のある都道府県の標準報酬月額保険料額表を用いて確認してください。

算定基礎届の作成・提出

算定基礎届に関する書類一式を利用して、提出期間内に決められた提出方法に従って、事務センターもしくは管轄の年金事務所へご提出ください。

最後に

社会保険の定時決定(算定基礎届)の手続き期間は原則10日間と、時間があるようでいてとても短い期間となります。手続き後、1年間の社会保険料の決定という重要な手続きとなるため、人事労務担当者はミスをすることなく行いたい手続きの1つです。

社会保険の定時決定(算定基礎届)の手続きのように煩雑であるのと同時にとても大切な手続きである業務に関しては、社会保険の事務手続きのプロである社会保険労務士にぜひお任せください。社会保険労務士の目線が入ることで、労務管理や賃金体系などの改善点も見えてくるはずです。

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