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お役立ち情報

解雇制限・予告

このお役立ち情報のポイント

  1. 解雇の定義、解雇の種類について理解しましょう。
  2. 労働基準法に定められた、解雇制限・解雇予告について理解しましょう。
  3. 止むを得ず解雇を行う場合でも正しい手順・手続きをもって行い、労使双方が納得のいくかたちにしていきましょう。

解雇の定義・種類

会社を取り巻くいろいろな状況や環境の変化によって会社の経営状況が悪化し、止むを得ず人員削減を行わなければならない状況に陥ってしまった場合の「解雇」という選択。新型コロナウィルスの蔓延によってそういった状況となってしまった会社も少なくありません。ここでは、そういった状況であっても、不当な「解雇」が行われないよう、また「解雇」による労使間のトラブルを未然に防ぐためにも、特に会社の人事・労務に関わる方に理解を深めて頂きたいと思います。

解雇の定義

解雇とは「労働者側に労働契約を終了する意思がないにもかかわらず、使用者側から一方的に労働契約を解約・終了すること」をいいます。

解雇の種類

解雇には大きく分けて「懲戒解雇」、「諭旨解雇」、「普通解雇」、「整理解雇」の4種類があります。それぞれを以下に簡単に説明していきます。

  • 懲戒解雇
    従業員としての義務や規律を違反した場合、社内の秩序を大きく乱すような問題を起こした場合などのペナルティとして行います。労働者に対するペナルティの中で最も重い処分といえます。
  • 諭旨解雇
    「諭旨(ゆし)」とは、物事の趣旨を諭し告げることをいいます。諭旨解雇とは、従業員が問題を起こした際に、使用者と従業員とで話し合いを持つことにより、従業員に解雇を受け入れてもらう、もしくは解雇を促すという懲戒処分です。諭旨退職ともいいます。労働者に対する処分の中で、懲戒解雇の次に重い処分といえます。
  • 普通解雇
    労働者が傷病やその他の理由によって業務を遂行できない状況にある場合、もしくは協調性の欠如や明らかな勤務成績の不良等を理由に、使用者側が行う処分となります。普通解雇は、懲戒処分ではないという点から懲戒解雇とは区別され、解雇を行うための手続きが異なる場合もあります。
  • 整理解雇
    会社の業績不振や業績悪化によって危機的状況にあり、会社存続のために止むを得ず行う解雇をいいます。整理解雇を行う場合には、以下の4つの要件が求められます。
    1. 人員削減の必要性(解雇による人員整理は必要であり止むを得ないものである)
    2. 解雇回避努力義務(希望退職の募集や配置転換などにより解雇しない努力を行ったか)
    3. 人選基準の合理性と適用の公平(人選基準に合理性があり、適用においても公平であること)
    4. 労働者に対する説明義務が十分にはたされていること

懲戒解雇と普通解雇の大きな違いは、懲戒処分ではないこと、そして解雇予告、解雇予告手当の支給の有無に異なる場合があることとなります。この点に関しての理解を深めるためにも、解雇制限および解雇予告についてもご紹介していきます。

解雇のイメージ

労働基準法における解雇制限

労働基準法第19条の記載

労働基準法第19条では「解雇制限」に関して、下記のように定められています。

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。②前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

※第六十五条‥
使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

※第八十一条‥
第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

つまり、労働者が傷病による療養や産前産後休業などの理由により働けない状況にあるときに解雇されてしまうことにより、労働者の生活を脅かす可能性があるため、解雇に関して制限を設け、労働者の生活の安定を図ることを目的として法律により定められています。労働基準法第19条で記載されている内容(但し書きより前)を図解にすると以下のようになります。

傷病による療養期間およびその後30日間の解雇制限

産前産後休業後30日間の解雇制限

解雇日を特定する際、解雇日は解雇制限なしの期間内である必要があります。

また、労働基準法第19条には、産前産後休業期間に関連した制限が記載されていますが、その他の法令では、産休申出を理由とする解雇等の禁止は男女雇用機会均等法によって制限され、育児休業申出や育休中の解雇等の禁止は育児介護休業法により禁止されています。どちらも厳密には解雇をすること自体を禁止しているわけではないのですが、労働者にとって不利益な取り扱いとなることを禁止している法令となります。

産休を取られる従業員の多くは育休も連続して取る場合が多く、産休期間のみの解雇制限だけでなく、産休後の育休期間中にも、労働基準法の解雇制限に似た措置として「男女雇用機会均等法」や「育児介護休業法」などの他法令で、解雇を制限するかたちをとっているため、こちらも覚えておきましょう。

労働基準法第19条における制限例外

労働基準法第19条で定められている「解雇制限」における但し書き以降には、この制限の例外が定められています。

ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。②前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

        
業務上の傷病等による休業+30日間 産前産後休業+30日間
例外
※解雇制限が
解除される場合
①打切補償を支払う場合(認定不要)
②天災事変・その他やむを得ない事由により
事業継続が不可能となった場合(労働基準監督署の認定が必要)

①打切補償を支払う場合

「打切補償」とは、業務上の傷病等により療養休業していた従業員が、治療開始後3年経過しても治療が終わらない場合に、会社がその従業員の平均賃金の1200日分を支払うことによって、その従業員への補償を終了することができる制度です。労働基準法第81条の規定に従って「打切補償」を支払った場合には、会社がその従業員を解雇することが出来ます。

②事業継続が不可能となった場合(天災事変・その他やむを得ない事由)

地震などの自然災害や天災事変等により事業の継続が不可能となってしまった場合、従業員の解雇をすることが出来ます。この場合、労働基準監督署の認定を受ける必要があります。

労働基準法における解雇予告

労働基準法第20条の記載

労働基準法第20条では解雇における「解雇予告」に関して、下記のように定められています。

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。②前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。③前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

この条文を表にまとめたものが以下となります。

      
解雇予告(原則) 例外(予告が不要な場合) 例外の例外(予告が必要な場合)
  • 解雇日の30日前から解雇予告をすること
  • 30日分の解雇予告手当を支払うこと(=平均賃金)
  • 上記を併用
  • 労働者の責に帰すべき事由での解雇の場合(労働基準監督署の認定が必要)
  • 天災事変等による事由で事業継続が不可能な場合(労働基準監督署の認定が必要)
  • 日雇い
  • 1か月を超えた期間
  • 2か月以内の期間を定めて就労する場合
  • 所定就労期間を超えた場合
  • 季節的業務で4か月以内の定めで就労する場合
  • 所定就労期間を超えた場合
  • 試用期間内
  • 14日間を超えた場合

解雇予告の原則について

止むを得ず解雇を行う場合には、①少なくとも30日前に解雇予告を行う必要があります。解雇予告を行わない場合には、②解雇と同時に30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。もし予告の日数が30日に満たない場合には、③その不足した日数分の平均賃金を支払う必要があります。平均賃金については、別ページでご紹介している「お役立ち情報:平均賃金」をご参照下さい。

解雇予告の例外について

止むを得ず行う解雇が、

  • 労働者の責に帰すべき事由での解雇の場合(労働基準監督署の認定が必要)
  • 天災事変等による事由で事業継続が不可能な場合(労働基準監督署の認定が必要)

は解雇予告を行う必要はありません。ただし「懲戒解雇」の場合全てにおいて「労働者の責に帰すべき事由での解雇」となるわけではないので注意しましょう。「懲戒解雇」も他の解雇と同様に、原則の解雇予告や解雇予告手当の支払い義務が発生します。

その他、

  • 1か月以内で就労する日雇い労働の場合
  • 2か月以内の期間を定めて就労する場合
  • 季節的業務で4か月以内の定めで就労する場合
  • 14日以内の試用期間中の場合

についても解雇予告を行う必要はありません。

解雇予告通知

解雇予告の通知方法については、口頭で行う場合でも法的には可能です。しかし、解雇を行うということは労働者の生活に対して多大なる影響を与える事であり、不当解雇の可能性や正しい手続きが取られているかなど、その後、労使間のトラブルになりかねません。口頭での伝達だけではなく、「解雇予告通知書」として書面で行うことを推奨いたします。「解雇予告通知書」には、解雇をするという意思、解雇日、明確な解雇理由等をきちんと明記したうえで、通知書を手渡す際にも、労使双方が納得のいくように口頭での話し合いをする必要があります。

最後に

昨今の新型コロナウィルス感染症の影響により、会社の業績が悪化し経営困に陥っている企業も少なくありません。止むを得ず「解雇を行う」という決断を下したという事案も増えているのは確かです。会社を存続させるための決断として、他に選択肢がない状況により解雇を行った場合でも、その選択が労働者の生活を一変させてしまう重大な選択であることを、今一度理解する必要があります。「解雇」を行う際には、正しい手順・手続きを行い、労使間のトラブルに発展しないよう細心の注意をもって進めていきましょう。

新型コロナウィルス感染症の事例だけでなく、不祥事を起こしてしまった社員や社内の秩序を著しく乱してしまった社員などの解雇事例もあり、それぞれの事例によって一つ一つ対応方法を判断する必要があるため、知識と経験をもった専門家に相談することをおすすめ致します。阪神労働保険事務センターでは、労使トラブルに発展しないよう、また、なによりも労使双方が納得した選択ができるよう、皆様のご相談をお受けしております。こういった「人事労務管理」に関わる事柄につきましては、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

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