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お役立ち情報

給料の手取り額と保険料

このお役立ち情報のポイント

  1. 給与明細の正しい見方を理解しましょう。
  2. 手取り給料額を左右する社会保険料や所得税等について理解しましょう。
  3. 給料と各種保険料や税金の関係をきちんと把握し、事業主として労働者の手取り額を上げる工夫を検討してみましょう。

給料に関するこんな悩み

従業員のお給料を見て「昇給したはずなのに給料明細の額面をみたら思ったより上がってないな」と違和感を感じている事業主様や「昇給したのに手取り給与が増えていないんです」と従業員から相談を受ける事業主様がよくいらっしゃいます。その違和感やがっかりしてしまう気持ちの原因の1つとなるのが毎月の給与明細に載ってくる保険料や税金などの控除額です。この控除額、給料から意外と多く引かれているなと感じている人も多いのではないでしょうか。

事業主様の中には実際に給与計算を担当していないと、実際にどのように計算されているのかを知らずにいる方も多いのではないかと思います。保険料や税金等の控除額の計算方法を理解して、手取り給与をシミュレーションしながら昇給額を考えるのが従業員の皆さんのためにもなり、日々の業務へのモチベーションアップにもつながります。そこで今回はどんな保険料や税金がどれだけ引かれているのか、どのように計算されているのかをご紹介します。

給与明細の見方

給与明細には、基本的は①勤怠、②支給、③控除の3つの項目が載っています。それぞれが意味するものについてみていきましょう。

  1. 勤怠
    出勤日数や遅刻、早退、休憩、欠勤を含む実働時間、残業時間、有給休暇の利用など、その月の「勤務状況」を示すものになります。
  2. 支給
    給料のベースとなる基本給と、時間外手当、通勤手当、役職手当などの各種手当が記載されます。欠勤控除がある場合にはマイナス(-)の支給額が記載されます。これらを含めた「会社から支給される給与」のすべての支給額を合計したものを「総支給額」と呼びます。「総支給額」は、会社の就業規則や人事評価を基に決定されています。
  3. 控除
    給与から「差し引かれるお金」を控除といいます。基本的には、社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)、雇用保険料、源泉所得税、住民税などがあります。

この3つの項目から算出された、支給額合計、控除額合計が確認できます。

給与明細のサンプル

給与の手取り額とは

給与の手取り額とは、実際に振込または現金手渡しなどで支給される給与のことをいいます。給与明細では「差引支給額」や「振込(現金)支給額」などと表記されています。つまり、給与の手取り額は、「総支給額」から「控除合計額」を引いた額となります。

差し引き支給額 = 総支給額(支給部分の合計) ー 控除合計額(控除部分の合計)

このことからもわかるように、給与の手取り額を左右するのは、控除合計額ということになります。では給与の控除合計額に含まれる社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)、雇用保険料、源泉所得税、住民税について、次の項で詳しくみていきましょう。

給与の控除部分に含まれるものと見直しのポイント

社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)

社会保険料とは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の総称です。会社に勤務しており一定要件を満たしていれば、労災保険料以外のすべての社会保険料が控除される仕組みとなっています。介護保険については、健康保険及び厚生年金保険に加入している労働者のうち、40歳~64歳までの方が対象となります。社会保険に該当する要件については、別ページ「お役立ち情報:被保険者の範囲」をご参照ください。

一般従業員が週40時間フルタイムとしている企業では、健康保険と厚生年金保険が週30時間以上を勤務している従業員に対して適用されます。年1回の社会保険の定時決定(算定基礎届)や固定給に変動あった時には社会保険の随時改定(月額変更届)を実施し、社会保険料の等級(標準報酬月額)を決定します。この社会保険料の等級(標準報酬月額)を都道府県ごとに決められた健康保険・厚生年金保険料額表に照らし合わせて社会保険料の支払額が決定します。

また、厚生年金保険料率は労働者の給与の18.3%を事業主と従業員で折半するため、事業主が9.15%、従業員9.15%を負担することとなります。介護保険料率は労働者の給与の1.64%を事業主と従業員で折半するため、事業主が0.82%、従業員が0.82%を負担することとなります。

社会保険料を抑えるポイント!
年1回の社会保険の定時決定(算定基礎届)は毎年4月、5月、6月に支給される賃金をベースに計算されます。時間外手当、季節手当、年4回以上の賞与(特別手当)など賃金に含まれるため、4~6月の支給に含めてしまった場合、その後1年間の社会保険料が従業員、事業主ともに負担増となってしまいます。そこで社会保険料を抑えるポイントとして、事業主の皆さんには昇給の時期を7月以降にずらすこと、労働者の皆さんにとっては4~6月に支給される分の対象月について、時間外手当(残業代)を減らすようにすることが得策であるといえます。

ここに注意!
通勤手当は非課税で処理されることが多いので、税金の計算の際には含まれませんが、社会保険の計算上は「含まれます」。つまり、通勤手当を含む支給額を基に社会保険料、雇用保険料は計算されますのでこの点にご注意ください。

雇用保険料

雇用保険とは主に求職者給付、教育訓練給付、育児介護休業時、労働者の失業や、雇用が困となったときの労働者の生活や雇用の安定を維持するための保険給付、また再雇用の支援のための保険給付を行う制度です。雇用保険の保険料は、事業主と労働者それぞれの負担となります。週20時間以上勤務をしている、かつ31日以上引き続き雇用されることが見込まれる一般労働者・アルバイト・パートタイム労働者が対象となります。雇用保険に該当する要件については、別ページ「お役立ち情報:被保険者の範囲」をご参照ください。

雇用保険は事業の種類により保険料率が異なります。別ページ「お役立ち情報:労働保険の年度更新」に記載の業種別の雇用保険料率表を参考にしましょう。

●令和4年4月1日~9月30日

①労働者負担(失業等給付・育児休業給付の保険料率のみ) ②事業主負担   ①+②
雇用保険料率
失業等給付・育児休業給付
の保険料率
雇用保険二事業
の保険料率
一般の事業 3/1,000 6.5/1,000 3/1,000 3.5/1,000 9.5/1,000
(3年度) 3/1,000 6/1,000 3/1,000 3/1,000 9/1,000
農林水産・※
清酒製造の事業
4/1,000 7.5/1,000 4/1,000 3.5/1,000 11.5/1,000
(3年度) 4/1,000 7/1,000 4/1,000 3/1,000 11/1,000
建設の事業 4/1,000 8.5/1,000 4/1,000 4.5/1,000 12.5/1,000
(3年度) 4/1,000 8/1,000 4/1,000 4/1,000 12/1,000

●令和4年10月1日~ 令和5年3月31日

①労働者負担(失業等給付・育児休業給付の保険料率のみ) ②事業主負担   ①+②
雇用保険料率
失業等給付・育児休業給付
の保険料率
雇用保険二事業
の保険料率
一般の事業 5/1,000 8.5/1,000 5/1,000 3.5/1,000 13.5/1,000
農林水産・※
清酒製造の事業
6/1,000 9.5/1,000 6/1,000 3.5/1,000 15.5/1,000
建設の事業 6/1,000 10.5/1,000 6/1,000 4.5/1,000 16.5/1,000

ここに注意!
通勤手当は非課税で処理されることが多いので、税金の計算の際には含まれませんが、社会保険の計算上は「含まれます」。つまり、通勤手当を含む支給額を基に社会保険料、雇用保険料は計算されますのでこの点にご注意ください。

労災保険料

働いている全ての従業員、パートタイムや有期雇用などの契約形態は問わず全員が対象となります。労災保険に該当する要件については、別ページ「お役立ち情報:被保険者の範囲」をご参照ください。ただし、労災保険料は全額事業主負担のため、従業員の負担はゼロとなります。

所得税

所得税は源泉徴収税額表を基に計算されます。労働者の副業の有無や扶養家族の人数によって所得税控除額が変わります。月のお給料から控除される所得税については、あくまでも仮計算によって算出された金額となるため、会社に勤めている労働者であれば、会社が年末調整を行うことによって過不足金額を調整します。

所得税を抑えるポイント!
ふるさと納税、生命保険控除、iDECO、NISAによる所得控除額を増やすことで、課税対象となる所得額が減り、トータルで納税すべき源泉所得税の金額を減らすことができます。ふるさと納税、生命保険控除、iDECO、NISAなどを所得控除といいます。所得控除にはその他、医療費控除やひとり親控除など労働者の生活環境や医療などの個人的事情を加味して所得税を減らすことができる制度なのです。会社に勤めている人はこの所得控除を理解し、しっかりと年末調整の資料を提出し、源泉所得税額を減らしましょう。

住民税

給料をもらっている個人が支払う住民税は「個人住民税」といわれ、「市町村民税」と「都道府県民税」によってその地域で発生する費用を負担するという目的のために徴収を行っています。前年の所得額に応じて、居住地域の自治体が計算をし、毎年5月頃に各自治体から6月~翌年5月分までの住民税がいくらになるのか「特別徴収税額通知書」として通知を行います。

ここに注意!
自治体により異なりますが、前年(1~12月)の所得額が100万円以下で他に収入がない場合には、翌年から特別徴収される住民税はありません。

最後に

働く皆さんが毎月手にする給与明細ですが、その中身まで吟味しながらじっくりと見ることは少ないのではないでしょうか。労働者だけではなく事業主の皆さんも、給与を通して納税した金額や各種保険料、年金等をいくら支払っているのかを今一度確認してみることによって、会社全体のお金の流れや従業員個人個人のお金の流れを把握することができ、会社経営のヒントになるはずです。

また売上アップに貢献してくれた従業員に昇給という形で還元したいと考えられている事業主の皆さんは、従業員の給料を上げるだけでなく、給料からの控除額を考慮し、昇給の算定時期をずらす等の対策を講じ、給料に付随する社会保険料の支払額を減らすことによって人件費全体を削減するなどの工夫も行ってみて下さい。

弊社では会社経営に関する節税、節・保険料についてもご相談にのります。お気軽にお問い合わせ下さい。

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