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お役立ち情報

割増賃金

このお役立ち情報のポイント

  1. 割増賃金の支払いが必要な労働に関して確認しましょう。
  2. 割増賃金率引き上げや計算方法、代替休暇による支払いについて理解しましょう。
  3. 割増賃金に関して理解し労働時間管理の徹底など日々の業務を見直しましょう。

割増賃金とは

3種類の割増賃金

割増賃金を支払う必要がある労働には、下記の3つの種類があります。

労働の種類 支払う条件 割増率
時間外労働 法定労働時間を超えた場合(1日8時間・週40時間) 25%以上
時間外労働が限度時間(1ヵ月45時間・1年360時間等)を超えたとき(特別条項付き時間外労働) 25%以上(※)
休日労働 法定休日(週1日)に勤務させたとき 35%以上
深夜労働 深夜22時~早朝5時までの間に勤務させたとき 25%以上

※法定の割増率(25%)を超えるよう努力義務が必要となります。

割増賃金が発生するのは、法定時間外労働を行った場合となります。そのため、所定時間外労働が法定時間内の残業である場合、割増賃金は発生しません。詳しくは別途具体例にてご説明する「割増賃金の計算方法」の項目をご確認下さい。時間外労働の詳細、上限制限・36協定書については、「お役立ち情報:時間外労働」をご参照ください。

法定割増賃金率の引き上げ

平成22年4月に、働き方改革の一環として「法定割増賃金率の引き上げ」という改正労働基準法が施行されました。改正の内容は、1カ月60時間を超える法定時間外労働を行った場合に、会社は労働者へ50%以上の割増率で計算した賃金を支払う義務があるというルールです。ここでの「1か月」とは、賃金計算期間の初日や毎月1日、36協定の期間の初日を起算日とした「1か月」になります。この起算日は就業規則にて定める必要があります。

「法定割増賃金率の引き上げ」 は、会社側に経済的な負担を課すことによる無駄な時間外労働の抑制と、労働者の生活の時間と健康の保持等を目的として行われた改正です。この改正は、施行後すぐに大企業にのみ適用され、中小企業には施行猶予期間が与えられました。中小企業は2023年4月1日から適用となります(下記表※)。

労働の種類 支払う条件 割増率
時間外労働 法定労働時間を超えた場合(1日8時間・週40時間) 25%以上
時間外労働が限度時間(1ヵ月45時間・1年360時間等)を超えたとき(特別条項付き時間外労働) 25%以上
《法改正による追記》時間外労働が1か月60時間を超えたとき 50%以上(※)
休日労働 法定休日(週1日)に勤務させたとき 35%以上
深夜労働 深夜22時~早朝5時までの間に勤務させたとき 25%以上

上記の表を下記の図に表してみると、(A)は1カ月の時間外労働がない場合を表しているので、この場合の賃金は割増のない賃金となります。(B)は1カ月の時間外労働が60時間以下の場合を表しているので、この場合の賃金の割増率は25%以上となります。最後に(C)は1カ月の時間外労働が60時間を超える場合を表しているので、この場合の賃金の割増率は50%以上となります。

労働時間による割増率の適用

1か月60時間の時間外労働には、法定休日(週1日・例えば日曜日)に行った労働は含まれませんが、法定休日以外の休日(例えば土曜日)に行った時間外労働は含まれます。そのため、割増賃金を算出するにあたって、労働契約や就業規則等で法定休日とそれ以外の休日、およびそれらの賃金割増率を明確に決定しておく必要があります。

また、法定時間外労働の時間数に対して、
例えば
・45時間以下の場合の割増率は25%
・45時間を超える~60時間以下の場合の割増率は30%
・60時間を超える場合は50%
というように、法定を上回る割増率を具体的に決定しておくことも重要です。

正しい割増率の適用

下記の表を参考にしながら、割増賃金を算出する際の正しい割増率の適用に関して確認しましょう。補足となりますが、下記の表は基本的な割増率となり、労働契約や就業規則等でそれぞれの会社ごとに法定休日や法定休日以外の休日の割増率などが設定されている場合には、この表を上回った割増率であれば問題ありません。

労働の種類 支払う条件 割増率
時間外労働 法定労働時間を超えた場合(1日8時間・週40時間) 25%以上
時間外労働が限度時間(1ヵ月45時間・1年360時間等)を超えたとき(特別条項付き時間外労働) 25%以上
時間外労働が1か月60時間を超えたとき 50%以上
休日労働 法定休日(週1日)に勤務させたとき 35%以上
深夜労働 深夜22時~早朝5時までの間に勤務させたとき 25%以上

月60時間を超える法定時間外労働と深夜(早朝)労働の関係

深夜22時から早朝5時の時間帯に、法定時間外労働を1か月60時間を超えて行った場合、深夜割増率25%以上に加えて時間外割増率50%以上を支払う義務があります。

深夜割増率25%以上  +  時間外割増率50%以上  = 割増率75%以上

この点に注意して、深夜業務のある会社は賃金の割増率を正しく使用しましょう。

1日(所定労働日及び法定休日以外の休日)の労働時間における割増率

所定労働時間が9時~17時の労働契約下での労働者の1日の労働に対する賃金の割増率は以下のようになります。図からわかるように残業といっても、法定時間内の残業の場合は、割増率の適用はありません。法定時間外労働から割増率の適用となります。

1日(所定労働日及び法定休日以外の休日)の労働時間における割増率
  • 17時~18時の賃金:割増率なし
  • 18時~22時の賃金:1時間あたりの賃金×1.25×4時間
  • 22時~翌5時の賃金:1時間当たりの賃金×1.50×7時間

法定休日に労働した場合の割増率

法定休日に所定時間労働正午12時~深夜12時(24時)まで労働した場合の割増率は以下のようになります。

法定休日に労働した場合の割増率
  • 12時~22時の賃金:1時間あたりの賃金×1.35×9時間
  • 22時~24時の賃金:1時間当たりの賃金×1.60×2時間

※参照:詳しくは厚生労働省発行の割増賃金に関する資料をご確認下さい。

割増賃金の計算方法

割増賃金の計算に必要な「1時間あたりの賃金」の算出方法

法定時間外労働や深夜労働、休日労働にあたる労働時間の1時間あたりの割増賃金を算出する計算式は、以下のようになります。

1時間あたりの割増賃金 = 1時間あたりの賃金 × 割増率

月給制の場合、上記の計算式の「1時間あたりの賃金」を計算する必要があります。「1時間あたりの賃金」を算出する計算式は、以下のようになります。

月給制の場合の1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ 1年間における1か月平均所定労働時間

1時間あたりの賃金を算出するのに必要な「月給」に含まれないもの

  • 家族手当(※)
  • 通勤手当(※)
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間毎に支払われる賃金

※家族の人数や、通勤時間、距離などによって固定されない手当は含まれませんが、一定額が支給される場合は月給に含まれます。

◆具体例:
年間所定休日122日、1日の所定労働時間が8時間、月給28万円の場合の「1時間あたりの賃金」

1年間の合計所定労働時間
(365 - 122) × 8   = 162 ・・・1年間における1か月平均所定労働時間
12

28万円 ÷ 162時間 = 1728円 ・・・1時間当たりの賃金

「1時間あたりの賃金」を算出する多くの場合、1円未満の端数がでることがあります。この場合、労働基準法では、端数が生じた場合、50銭未満端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げるように処理します。これは割増賃金額に対しても同じ処理となります。

上記の具体例の労働条件で、法定時間外労働や深夜労働、休日労働を行った場合には、ここで算出した「1時間あたりの賃金」に割増率を乗じた金額が、「1時間あたりの割増賃金」となります。

代替休暇による割増賃金の支払い

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った場合、割増率50%以上の賃金を支払う必要があるというお話をしました。これに対して、1か月60時間を超える長時間労働を行った労働者の健康の維持と休息時間の確保を目的として、法定割増賃金率の引き上げ分を賃金として支払う代わりに、代替休暇(有給休暇)を付与することができます。

代替休暇制度を導入における労使協定の締結

代替休暇制度を導入するためには、過半数組合、もしくは過半数代表者を協定当事者として労使協定を結ぶ必要があります。労使協定で定めるべき事項は、下記となります。

  1. 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
    代替休暇の時間数=(1か月の法定時間外労働時間数ー60時間)× 換算率
    ※換算率とは、割増賃金として支払う場合の割増率と代替休暇の付与により支払う割増率の差となります。
  2. 代替休暇の単位(1日または半日)
  3. 代替休暇の付与期間
    法定時間外労働が60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内の期間に付与することを定める必要があります。
  4. 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払い日

これら労使協定内で定めるべき項目については、就業規則内にも記載が必要となります。

代替休暇の取得に関する注意点

・代替休暇の取得をするかどうかは、労働者の意思により決定されます。「割増率50%以上の賃金を受け取る」か、もしくは「代替休暇+割増率25%の賃金を受け取る」の2つの選択肢となります。

・60時間を超える法定時間外労働に対してすべてを代替休暇のみで付与することは出来ません。割増率25%の部分(下記の図B)は必ず賃金として受け取り、残りの25%部分(下記の図C)については代替休暇とするか割増賃金として受け取るかを選択できるものとなります。

割増賃金をだいたい休暇で取得する場合

・「法定割増賃金率の引き上げ分」 に対する代替休暇の付与制度は、「法定割増賃金率の引き上げ」の猶予期間にある中小企業は利用することができません。 「法定割増賃金率の引き上げ」 が適用となる 2023年4月1日から利用することができます。

最後に

労働者の労働時間の管理や割増賃金、割増率の管理は、労働者の給与に直接か関わってくる重要な日々の労務管理です。労使間のトラブルを防ぐため、そして労働者の健康で生産性の高い労働のためにも、労働時間の管理の徹底や、現状の業務の見直し、労働時間を短縮できる業務の洗い出し、生産性を向上するために何をしていくべきなのかを考えることが重要です。また、割増賃金のみならず、きちんと労働契約や就業規則で必要な項目が定められているかどうかも、今一度ご確認下さい。

日々の労務管理就業規則作成給与計算業務等、不明な点やお困りのことがございましたら、お気軽に阪神労働保険事務センターまでお問い合わせください。

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