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お役立ち情報

管理監督者

このお役立ち情報のポイント

  1. 会社における管理監督者という立場、定義を理解しましょう。
  2. 管理監督者における労働基準法の適用除外となる規定を確認しましょう。
  3. 賃金や待遇等のトラブルを防ぐために管理監督者の実態を会社として見直しましょう。

「管理職には残業代は支給しなくても良いのではないか」と考えられている事業主の方は多いのではないでしょうか。一般的にいう「管理職」という立場とされる人を労働基準法では「管理監督者」という名称でその定義がなされています。実際に一般労働者と規定や待遇が異なる「管理監督者」は、労働基準法の定義をみてみるとごく一部の人を指すことがわかります。そもそもの労働基準法で定義された「管理監督者」をしっかりと理解し、法令順守した運用をしていきましょう。

管理監督者とは

労働基準法第41条「労働時間等に関する規定の適用除外」では、以下のように「管理監督者」を定義しています。(労働基準法第41条抜粋)

  1. 別表第一第六号(林業を除く。)(※1)又は第七号(※2)に掲げる事業に従事する者
  2. 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  3. 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

※1)土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
※2)動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業

間違いやすいポイント!

  • 第1項目の別表第1第6号に記載された事業のうち林業は含まれません
  • 第2項目の「機密の事務を取り扱う者」には人事に関する事務や経営担当者は含まれません!

また、第2項目の「監督若しくは管理の地位にある者」については、その意味するところについて誤解をされる場合がとても多いので注意が必要です。ある労働者が「管理監督者」であるか否かを判断するために必要なポイントは、厚生労働省発行の「労働基準法の施行に関する件」や労働省労働基準局が発行した「労働基準法関係解釈例規について」の通達に記載がされています。こちらをまとめてみました。

  • 労働者が管理監督者に該当する否かは、役職名で判断するのではなく、実質的な職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金(待遇)等から総合的な判断が必要
  • 労務管理について経営者と一体的な立場にある者、例えば労働者の労働条件などの決定権を持つ、経営方針に関して参画できる、意見を言える立場である、人事採用権をもつなど
  • 重要な職務と責任から一般的な労働者の勤怠や労働時間の規制の枠を超えて活動することが必要とされる者、例えば出退社時間などの厳格な制限を受けないなど、自分の裁量で自由に労働時間を調整して業務を行うことができる者。つまり、所定労働時間の勤務が義務付けられている場合や上司からの指示命令がある立場のものにおいては管理監督者(法41条該当者)であるとはいえない
  • 賃金等の待遇面についても一般労働者よりも優遇されているか否かは判断する上で確認すべきポイントではあるが、優遇されているからといって全ての場合において管理監督者(法41条該当者)であるとはいえない

このように、ある特定の労働者が「管理監督者」であるかどうかという判断については、上記で紹介した間違いやすいポイントに注意しながら、普段の業務内容や責任、権限、勤務態様、そして待遇など総合的に判断することが必要となります。以下のフローチャートを活用すると「管理監督者」であるかどうかの判断がしやすくなります。

管理監督者とは

ある従業員が管理監督者であるのか判断に迷った際には、上記のフローチャートを活用して頂き、一つ一つ項目を確認しながら判断をして見て下さい。

管理監督者

管理監督者が適用除外される労働基準法の規定

管理監督者は労働基準法で定められた規定のうち一部が適用除外となります。では具体的になにが適用除外されるのかをみていきましょう。

労働基準法 規定 管理監督者への適用の有無
第32条 労働時間(1週40時間、1日8時間) 適用されない
第32条の2 一箇月単位の変形労働時間制 適用されない
第32条の3 フレックスタイム制 適用されない
第32条の4 一年単位の変形労働時間制 適用されない
第32条の5 一週間単位の非定型的変形労働時間制 適用されない
第33条 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等 適用されない
第34条 休憩 適用されない
第35条 休日 適用されない
★△ 第36条 時間外及び休日の労働 適用されない
  第37条 時間外、休日及び深夜の割増賃金 時間外、休日の割増賃金は適用されないが深夜の割増賃金は適用される
第38条 時間計算 適用されない
第38条の2 事業場外のみなし労働制 適用されない
第38条の3 専門業務型裁量労働制 適用されない
第38条の4 企画業務型裁量労働制 適用されない
  第39条 年次有給休暇 適用される
★■ 第40条 労働時間及び休憩の特例 適用されない

この表の一番左の記号に着目して下さい。労働基準法で定められた規定のうち適用除外となるものは大きく3つの種類にわけられます。

  1. ★マーク:労働時間(時間外労働)に関する規定(労基法第32条、33条、36条、38条、40条)
  2. ■マーク:休憩に関する規定(労基法第34条、40条)
  3. △マーク:法定休日(休日労働)に関する規定(労基法第35条、36条)

労働基準法第37条については、一般労働者は原則1日8時間、週40時間の労働時間を「法定労働時間」としてそれを超える労働は法定外残業となるため25%以上の割増賃金を支払う必要がありますが、管理監督者の場合にはこの時間外割増を支払う必要がありません。一方で、深夜労働を行った場合の割増賃金については適用されますので、深夜割増は支払う必要があります。

労働基準法第34条については、極端に言えば、全く休憩がない状態で1日働いていたとしても問題ないとされています。自分の裁量で労働時間を決定できる管理監督者だからこそ、そういった働き方の判断を管理監督者自身が行ったものとみなされます。ただ注意点として、事業主は管理監督者であったとしても過重労働にならないように労働時間の把握は必要となります

労基法第35条については、法定休日に労働した場合に一般の労働者であれば35%の割増賃金を支払う必要がありますが、管理監督者には休日割増賃金を支払う必要がありません

割増賃金

管理監督者にも適用される労働基準法の規定

前の項目で、管理監督者(法41条該当者)には適用されない労働基準法の規定を紹介しましたが、逆に、管理監督者にも適用される項目、一般的に間違いやすい項目についてもご紹介します。それが以下の2つの規定となります。

  • 深夜の割増賃金(労基法第37条)
  • 年次有給休暇(労基法第39条)

労働基準法で定められている深夜労働とは、午後10時から早朝5時をいいます。この時間帯に労働させた場合には、一般の労働者と同様に管理監督者であったとしても25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

年次有給休暇についても、深夜労働の割増賃金と同様に適用除外されません。つまり、出勤率や継続勤務年数などの要件を満たせば年次有給休暇は一般の労働者と同様に付与され、かつ付与日数10日以上であれば、年間5日以上を消化させる義務が生じます。

この適用除外とならない2点に関しては、注意しましょう。

最後に

事業主からすれば「管理監督者」として雇った場合、自分の裁量で働く権限があるのだから残業代を支払わなくて済む、つまり経費削減となる、簡単に結びつけてしまう方は少なくありません。しかし実態に即してみると、自身の業務内容や業務態様、与えられている権限について「本当に労働基準法で言う管理監督者に該当するのだろうか」と疑問に思う管理監督者の方も多く存在するように思います。

「名ばかり管理監督者」となり実際には不当な待遇を受けている場合や会社と管理監督者間での認識の違いによるトラブルが起こらないよう、今一度、管理監督者の実態を会社として見直しましょう。

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