社会保険適用拡大
令和3年11月現在、社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)は、法人の事業所(事業主のみの場合を含む)もしくは、非適用業種を除いて、常時雇用する労働者数5人以上の個人事業所において、一定の要件を満たす従業員の加入義務が発生します。これを社会保険の適用事業所といいます。令和4年10月から段階的に、適用事業所における特定4分の3未満短時間労働者の社会保険加入義務に対して、適用対象の企業の従業員数の条件の変更および適用対象企業に勤める労働者の適用対象者の変更が行われます。今回は、この「社会保険の適用拡大」に関する法改正についてご紹介します。
社会保険の適用事業所とは
自身の会社が、社会保険の加入が義務となる「強制適用事業所」となるか、もしくは厚生労働大臣の認可を受けて、その保険の適用となる「任意適用事業所」となるかどうかは、下記のフローチャートを基に確認をすることができます。
※非適用業種となる事業・・・農林水産、専門・技術サービスのうちの士業(法律事務所、特許事務所、公認会計事務所等)やデザイン業・経営コンサルタント業・写真業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業(旅行業、火葬・墓地管理業を除く)、娯楽業(映画館、スポーツ施設提供業等)、警備業、政治・経済・文化団体、宗教等
上記のフローチャートにおいて「個人事業主であるか」という項目が「✕ (当てはまらない)」(つまりその会社が法人事業)の場合、もしくは、「〇 (当てはまる)」(つまりその会社が個人事業主)であり、かつ「常時労働者数が5人以上」、かつ「非適用業種」でない場合、強制適用事業所となります。
社会保険の被保険者とは
社会保険の被保険者の種類は2つあります。それぞれの要件は以下のようになります。
被保険者の種類 | 被保険者の取り扱い | |
被保険者となる | 被保険者とならない | |
1.一般被保険者 |
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2.日雇特例被保険者 |
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※1)特定3/4未満短時間労働者の場合(令和3年11月現在)
被保険者となるためのパートタイマー・アルバイトの要件を満たさない場合、つまり1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、もしくは1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、以下の5つの要件を満たす場合は、被保険者となります。※下記の図でご確認下さい。
5つの要件:
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超える雇用期間が見込まれる
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 学生でない
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所に努めている(国・地方公共団体に属するすべての適用事業所を含む)
ここでいう特定適用事業所とは、厚生年金保険の適用対象者数に応じた事業所規模によって決定されます。この点に関して今回の段階的な法改正が行われます。令和3年11月現在では、厚生年金保険の 適用対象者数が501人以上の企業をいいます。
社会保険の法改正「適用範囲の拡大」
今回紹介する法改正により令和4年10月から段階的に、社会保険の適用範囲が拡大されます。変更点は、以下の対象企業の規模の変更および一部のパート・アルバイトの方の加入義務となります。
対象企業の規模の変更
令和3年11月現在、対象となる企業の従業員数の規模は、501人以上です。
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令和4年10月以降、対象となる企業の従業員数の規模は、101人以上となります。
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令和6年10月以降、対象となる企業の従業員数の規模は、51人以上となります。
このように段階的に拡大されます。
従業員数の数え方
この場合の従業員数とは、現在の厚生年金保険の適用保険者数となります。
厚生年金保険の適用者数は、フルタイムの従業員数と週労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数(パート・アルバイトを含む)を加算した人数となります。
パート・アルバイトの加入義務
対象企業で働くパート・アルバイト労働者は、以下4つの要件を満たす場合には、社会保険の新たな加入者となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超える雇用期間が見込まれる
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 学生でない
上記の要件を満たす全てのパート・アルバイトの方の年金(老後・障害・死亡)保障や医療保険がさらに充実するかたちとなります。新たに加入対象者となった従業員の把握、社内周知、必要に応じた説明会や個人面談等を通した従業員とのコミュニケーション、書類の作成や届出等が必要となってきます。
最後に
令和4年10月から段階的に施行される法改正に伴って、ご自身の会社の事業規模に応じた社会保険の加入義務が生じる従業員の増加が予想されます。ご自身の会社で働く従業員の社会保険加入対象者を今一度ご確認いただき、新たに加入対象となるパート・アルバイトの方へきちんと改正内容や社会保険制度に関して周知しましょう。
また、今後の従業員の働き方の確認・見直しをすると共に、人件費や賃金の見直し、法定福利費の増加に対しての経営プランの見直しや立て直しの必要が出てくる可能性があります。
阪神労働保険事務センターには、ファイナンシャルプランナーが在籍しているだけでなく、経営に関するご相談も承っております。社会保険に関する法改正における疑問点や不明点、今後の経営に関してお困りの点やご不明な点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。