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法改正

【令和4年1月施行】健康保険法・任意継続制度の見直し

令和4年1月に施行された健康保険法の任意継続制度の見直しでは、働いていた会社を退職後、最大2年間、在職時に加入していた健康保険の被保険者であり続けることのできる「任意継続制度」において、任意継続被保険者の資格喪失理由に「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出た場合」というものが追加された法改正となります。この任意継続制度の見直しについて概要・ポイントをまとめてご紹介します。

健康保険法・任意継続制度とは

日本では国民皆保険制度を取っているため、協会けんぽ、国民健康保険、健康保険組合など、なんらかの保険に加入し保険料を支払う必要があります。これは在職している会社を退職した後も同様で、退職後にもなんらかの健康保険に加入する義務があります。退職後の健康保険の選択肢には以下のものがあります。

  1. 再就職先での健康保険の加入
  2. 家族の被扶養者となる
  3. 国民健康保険に加入する
  4. 任意継続被保険者となる

1つ目の選択肢は再就職となるので、再就職先の規定に従う必要がありますが、2つ目、3つ目、4つ目は被保険者自身によって選択することができます。どのように選択をするのがよいか、それぞれにどのようなメリットやデメリットがあるのかなどの詳細は、「お役立ち情報:退職後の健康保険加入」をご参照下さい。この4つの選択肢のうちのひとつ「任意継続被保険者となる」というのが、在職中の会社で協会けんぽや健康保険組合の被保険者であった労働者が、自身の希望で加入を継続することができる健康保険の「任意継続制度」といいます。次の項以降で「任意継続制度」に関して紹介します。

退職後の保険

任意継続被保険者となるための要件

任意継続被保険者となるための要件は以下の2点となります。

  • 退職日までに継続2か月以上の被保険者期間があること
    ※退職ではなく、勤務時間や勤務日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当。
  • 退職日の翌日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を管轄の協会けんぽへ郵送提出すること
    ※被保険者の居住地を管轄する協会けんぽ支部へ提出します。
    ※健康保険組合に加入していた場合は健康保険組合にて手続きをします。

上記の要件を満たしている場合、被保険者本人の希望によりこの制度を利用することが出来ます。

任意継続被保険者の保険料

会社に在籍している間の保険料の支払いは会社と被保険者本人での折半となっていましたが、任意継続被保険者になると被保険者が全額負担することになります。この場合の健康保険料は、退職時の標準報酬月額(社会保険の等級)に応じた健康保険料となります。退職直前の給与明細の社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)の額を見て、標準報酬月額(等級)を確認することが出来ます。

任意継続被保険者となった場合、退職直前の給与明細に記載されている健康保険料のおよそ2倍の額になると思っていただくとわかりやすいかと思います。ただし、任意継続制度では保険料の上限があり、標準報酬月額30万円を上限として算出されます。令和4年の各都道府県の保険料額については協会けんぽのHPをご確認下さい。

任意継続被保険者に対する保険給付

任意継続制度の場合も、原則、在職中に受けた保険給付と同じ内容の給付を受けることが可能ですが、傷病手当金、出産手当金は任意継続被保険者には支給されません。(資格喪失前からの継続給付もしくは受ける条件を満たしている場合を除く)

任意継続被保険者の資格喪失/令和4年1月の法改正

任意継続被保険者として健康保険に加入できる期間は2年間となります。任意継続被保険者の資格喪失日は、下記のいずれかの日となります。資格喪失後は、速やかに協会けんぽ支部への保険証の返却が必要となります。

  1. 2年間の期間満了日の翌日
  2. 保険料が納付されなかった場合、納付期限の翌日
  3. 適用事業所の被保険者となった日(資格喪失申出書の提出が必要)
  4. 75歳の誕生日、または後期高齢者医療制度の被保険者となった日(資格喪失申出書の提出が必要)
  5. 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出た場合、その申出が受理された日の属する月の翌月1日(資格喪失申出書の提出が必要)
  6. 死亡した日の翌日(埋葬料(費)支給申請書の提出が必要)

上記の資格喪失日のうち、5番目の資格喪失日が令和4年1月の法改正で追加された資格喪失日となります。この法改正によって退職後の公的医療保険に関して本人の意思による決定が出来るようになり、任意継続制度から国民健康保険に切り替えることが可能となりました。

■なぜ健康保険の切り替えが起こる?

国民健康保険料は前年の所得を基に計算するため、任意継続被保険者の上限である標準報酬月額30万円以上である場合には、任意継続被保険者を選択した方が健康保険料が安くなる可能性が高くなります。しかし、法改正前は、国民健康保険への切り替え希望を理由に任意継続制度を脱退することは出来なかったため、任意継続制度を利用した最初の年は安い健康保険料に抑えることが可能でも、2年目は国民健康保険料の方が安くなる可能性も出てきます。退職後の収入に関してはとてもシビアに考える人が多く、一般的には給付内容の良さよりもより保険料が安いものへと考える人のほうが多くいます。

令和4年1月の法改正によって、1年目は任意継続制度を利用し、2年目以降は国民健康保険に切り替えることが可能となったため、退職後に収入がない場合には、2年目から国民健康保険に切り替えることで保険料軽減できるケースが出てくることとなりました

任意継続制度の保険料の算出方法と国民健康保険の保険料の算出方法が大きくことなるため、被保険者の状況によって、保険料がどのように変わるのかをしっかりと確認してみる必要があります。国民健康保険の保険料は被扶養者の人数などでも金額は変わるので、詳細な計算はお住まいの自治体に問い合わせをしてシミュレーションしてもらうのが得策です。

保険の見直し

最後に

退職後の健康保険については、保険料だけでなくご家族の人数や働いていた時の収入、退職後の収入など様々なことを考慮してどの健康保険制度に加入するのか考え、決めなくてはいけません。今回の健康保険法の任意継続制度の見直しという法改正によって、自分の意思で任意継続被保険者の資格喪失を選ぶことが出来るようになると、退職後の健康保険の選択肢の1つである任意継続制度もより利用しやすくなるのではないでしょうか。

例え話ですが、少し前の日本でも携帯電話を購入した際や契約会社の変更等を行った際に、その新たな契約に「2年の縛り」があり、一度契約するとすぐに変更することが出来なかった時代があります。こういった縛りがあるとなかなか「縛り」のある会社とは契約しにくかったと感じられた人は多かったのではないでしょうか。この「縛り」がなくなり、一度決めたことに対して自分の意思で変更することが可能となった場合、選択肢のひとつとして考えることが出来るようになり、利用しやすくなるように感じます。

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