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お役立ち情報

有期労働についての契約期間

このお役立ち情報のポイント

  1. 労働契約における有期契約期間に関して、理解しましょう。
  2. 有期労働契約に関する期間の上限、解雇、雇止めに関して理解しましょう。
  3. 有期労働についての契約期間について理解し、不要な労使間トラブルを防ぎましょう。

労働契約とは

労働者目線では「会社に勤める=雇用契約(労働契約)の締結」、企業目線では「従業員を雇い入れる・働いてもらう=雇用契約(労働契約)の締結」というように、労働契約とは、会社(使用者)と労働者(従業員)の間において必ず存在する労働における決まり事になります。

労働契約について定める2つの主な制度

労働契約について定める主な2つの制度は以下となります。

                                                             
労働基準法労働基準法に基づき定められた内容に違反があった場合には、行政監督指導の対象となる刑事上のルール。
労働契約法労働契約法に基づき定められた内容に従って、労使間トラブルを防止するための民事上のルール。

このそれぞれの制度に従って正しい「労働契約」を締結する必要があります。

労働契約の基本原則

労働契約を締結するにあたって基本的な理念や守られるべき原則があります。原則は5つあり、労働契約法第1章第3条で定められています。

  1. 労使対等の原則
  2. 均衡考慮の原則(就労実態に応じた均衡)
  3. 仕事と生活の調和への配慮の原則
  4. 信義誠実の原則(契約の遵守)
  5. 権利濫用禁止の原則
    (客観的にみて合理性に欠けるかつ社会通念上通用しない労働契約内容である場合には、権利濫用となりその部分の労働契約は無効となる)

権利濫用禁止の項目については、民法第1条第3項における「契約についての一般的原則」として規定されおり、この原則を労働契約法でも規定・確認したものとなります。この5つの原則に基づき、労働契約の締結や変更が行われる必要があります。

労働契約の締結

労働者の労働に対して会社が賃金を支払うことについて様々なルールを定め、それを会社(使用者)と労働者(従業員)がお互いに合意することにより、労働契約を締結させます。

  • 労働契約を締結させる際、労働基準法第2章第13条には「労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約部分については無効となり、労基法で定める基準による」と定められています。
  • 労働契約以外に就労のルールを定めた「就業規則」と労働契約が異なる場合、使用者と労働者との間の個別契約に値する労働契約が優先されます。
  • 労働契約および就業規則には、必ず書面にて明示しなければいけない項目があります。

労働条件の明示

労働基準法第15条第1項にて、会社が労働者を雇用する際の賃金や労働時間、その他労働条件の書面による明示について定められています。また、労働契約法第7条にて、合理的な内容の就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする、とされています。詳しい「労働条件の明示事項および明示方法」については、別ページ「お役立ち情報:労働条件の明示事項」をご覧ください。

労働契約期間

労働契約には、雇用期間の定めのない無期労働契約と、雇用期間の定めのある有期労働契約の2つの種類があります。法律上は、正社員、アルバイト、パートタイム労働などの雇用名称はあまり関係なく、労働契約の終了日の有無による違いとなります。

有期労働契約を締結した従業員が、契約終了日以降の雇用に対して漠然とした不安を抱えている場合が多くあります。会社側には、この有期労働契約について必要以上に短い期間を定めることによる反復更新が起こらないように配慮する義務があります(労働契約法第17条2項)。

反復更新が起こることによって生じる雇止めの不安の解消や、安心して働き続けることができるよう、労働基準法第14条で、有期労働契約の適正な利用のためのルールが定められています。

労働契約期間(有期労働契約)

ここでは、労働基準法第14条で定められた「契約期間」についてご紹介していきます。契約期間の定めのある労働契約には、契約期間の上限と労働者による契約解除の可否が定められています。それらは原則と条件のある特例の2つに分けられます。

雇用対象 上限 契約解除(労働者からの申出)
原則 3年 雇用期間が1年以上かつ労働契約期間の初日から1年経過した日以後、いつでも退職できる
特例 ①高度の専門的知識等を持った労働者
②満60歳以上の労働者
5年 止むを得ない理由
→ 直ちに解除できる。(民法)損害賠償請求の可能性あり
※1年経過後、いつでも退職できるという原則は適用除外
③一定事業完了に必要な期間を定める契約の場合 事業完了迄

労働基準法第14条:原則

【契約期間の上限】
契約期間に定めのある労働契約の場合、その期間の上限は原則として3年となります。
労働契約を締結する際にあらかじめ、労働契約期間終了後の契約期間の更新を約束したことにより、上限の3年を超えてしまう労働契約は違反となります。わかりやすく例を用いると、契約期間を2年、さらに就業規則等で雇用契約期間終了後の継続が規定されていて、かつ労働契約で「契約更新をする」と約束されている場合、合計4年間の労働契約となり、上限の3年を超えてしまうことになります。この場合、労働基準法第13条の規定により無効となり、3年間の労働契約に変更となります。

これとは対照的に違反とされないのが、労働契約の「自動更新」です。自動更新の場合は、「労使双方からの解約の意思表示がない場合には」という前提があるため、契約更新の際の双方の意思の確認、および継続の判断をする機会があるという解釈のもと、契約期間上限の3年を超えても問題ないとされています。この2つの違いに注意して、労働契約期間および更新について正しく労働契約および就業規則に記載する必要があります。また、この契約期間の上限は正規社員(フルタイム労働者)と同様にパートタイム労働者にも適用されます。

【労働者の申出による契約解除】
労働基準法附則第137条の定めにあるように、この有期労働契約において1年を超える契約期間で働く場合、労働者は労働契約期間の初日から1年経過した日以後であれば、いつでも退職を申し出ることができます。つまり裏を返せば、1年を超える有期労働契約の場合、雇用から1年未満の間に労働者から退職の申出があった場合でも、契約を解約する必要はないと解釈することができます。

労働基準法第14条1項:特例

【契約期間の上限】
高度な専門的知識等を持った労働者および満60歳以上の労働者の労働契約の場合、その期間の上限は特例で5年となります。

高度の専門的知識等を有する者とは、厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識、技術または経験を有する以下①~⑥とされています。

①博士の学位を有する者
②厚生労働省で定められた特定の資格を有する者
③厚生労働省で定められた特定の能力評価試験の合格者
④特許法上の特許発明の発明者・意匠法上の登意匠の創作者・種苗法上の登品種の育成者
⑤(1)一定の学歴および特定の実務経験を有するもので年収が1,075万円以上の者
 (2)システムエンジニアとして5年以上の実務経験を有するシステムコンサルタントで年収が1,075万円以上の者
⑥国等によりその有する知識、技術、経験が優れたものであると認定されている者
とされています。「高度の専門的知識等を有する者」についての具体的な業務、職業、資格等に関しては、厚生労働省が発行した通達をご確認下さい。

【労働者の申出による契約解除】
特例の場合、やむを得ない事情がある場合には直ちに契約の解除を行うことはできます(民法第628条やむを得ない事由による雇用の解除)が、その理由によっては、この労働者の退職により会社が被った被害に対して、会社側から損害賠償の請求が行われることもあります(民法第415条債務不行による損害賠償)。

解雇・雇止め・労働契約の終了

解雇・雇止め・労働契約の終了に関しては労使間トラブルになることが多いため、それぞれに関して基準を設け、労働者にとって不合理な状況にならないよう法で整備されています。有期労働契約は、すぐに契約解消できる、契約更新する必要はない、というようなイメージをもたれることが多くありますが、これは誤解です。有期労働契約であっても、ある一定期間を超えて契約している場合には、契約解消するにも様々なルールがあり、それらを守る必要があることを理解しましょう。

解雇に関する基準

解雇とは、使用者の解約権行使に基づく、契約期間中の契約解除のことをいいます。解雇をする場合にも、労働契約法や労働基準法で定められたルールがあります。

  • 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります(労働契約法第16条)。
  • 使用者は、止むを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができません(労働契約法第17条第1項)。
  • 止むを得ない理由で解雇を行う場合でも、30日前に労働者に予告を行うことや、予告が行われない場合には解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払う義務があります(労働基準法第20条)。

雇止めに関する基準

雇止めとは、契約終了の段階で、労働者の意思に関わらず使用者の都合によってその契約を更新しない(打ち切る)こと決定し雇用が終了することをいいます。平成24年8月に公布された有期労働契約における「労働契約法の一部を改正する法律」の中で、有期労働契約の反復更新のもとで生じる雇止めの不安解消を目的とした法改正『「雇止め法理」の法定化』が規定されました。下記の場合において、使用者による不合理な雇止めが禁止となります。

  • 有期労働契約が3回以上更新されているもしくは1年を超えて継続勤務している場合
    1. 少なくとも契約終了日の30日前までに、契約を終了する旨を予告する義務があります。
    2. 使用者は、労働者から雇止めの理由について明示を求められた場合には遅滞なくこれを交付しなければなりません。この理由は、「契約期間が満了する」という理由以外の理由である必要があります。
  • 1回以上更新かつ1年を超えて継続勤務している場合
    1. 使用者は、契約の実態や労働者の希望に応じて、契約期間を長くするように努めなくてはいけません。

労働契約の終了

労使間のトラブルや不合理な解雇、雇止めが起こらないよう、有期労働契約を締結する際には、労働契約や就業規則において、労働契約期間や更新の有無、更新の際の判断に関して基準を明示する必要があります。

  • 更新の有無
    • 自動更新とする
    • 更新する場合がありえる
    • 契約の更新はしない 等
  • 更新の判断基準
    • 契約期間満了時の労働者の業務量
    • 労働者の勤務成績や勤務態度
    • 労働者の能力
    • 会社の経営状況
    • 従事している業務の進捗状況 等

これらをきちんと明示することにより、不要な労使間トラブルを防ぎ、労働者が安心して働くことのできる環境作りに努めましょう。

有期労働契約から無期労働契約への転換

平成24年8月に公布された有期労働契約における「労働契約法の一部を改正する法律」の中で、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えて継続勤務している場合には、労働者からの申込みにより、無期労働契約へ転換することができるというルールが定められました(労働契約法第18条有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)。

無期労働契約への転換が可能な場合のイメージ

  • 契約期間が1年の場合の例
  • 契約期間が3年の場合の例

①申込み期間について
平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、6年目の更新の際の契約開始初日から末日までの間に無期転換の申込みが可能です。

②転換について
無期転換の申込みをすると、使用者が申込みを承諾したものとみなされ、その時点で無期労働契約が成立します。無期に転換されるのは、申込時の契約期間が満了する日の翌日からとなります。

③無期労働契約について
無期労働契約の労働条件は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約の内容と同一となります。

④更新について
無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申し込み件を放棄させることはできません。

※引用:厚生労働省発行リーフレット

無期労働契約への転換における特例

高度の専門的知識等 をもった労働者および継続雇用の高齢者に関しては、有期雇用特別措置法により、都道府県労働局長の認定を受けた場合には、無期労働契約への転換申し込み権が発生しないとする特例が設けられています。

最後に

雇用契約(労働契約)は、会社が人を雇用する際に必ず必要となります。雇用契約と一言でいっても、契約期間に上限があったり、有期雇用から無期雇用に転換する権利が発生したりと、様々な法令があります。人を雇う使用者は、雇用契約に関連するあらゆる知識をもっておくことで、労使間トラブルを未然に防ぎ、より働きやすい労働環境をつくることが可能になります。

それでもやはり、会社における労使間の事象はあらゆることが想定されるだけでなく、関連する法令も変化していくため、常に最新の情報を知っておくことは、なかなかしいことでもあります。そのため、人事労務に関するご相談や、雇用契約書の作成や雇用条件の見直し、就業規則作成等は、専門家である阪神労働保険事務センターへお気軽にお問合せ下さい。

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