最低賃金制度
このお役立ち情報のポイント
- 最低賃金制度の概要に関して理解しましょう。
- 最低賃金の確認方法、計算方法について理解しましょう。
- 最低賃金制度を理解して労使トラブルや罰則の対象とならないように気をつけたり、毎年の最低賃金の改正を賃金見直しのきっかけとしましょう。
最低賃金制度とは
働く人すべての人に関係する「最低賃金制度」、皆さんは、ご自身が働いて得た賃金が妥当なものなのか、最低限の対価を得ているのかを確認したことはありますか。特に事業主の皆さんは「最低賃金制度」をしっかりと理解して労使トラブルや罰則の対象とならないように気をつける必要があります。また「最低賃金」は毎年10月頃に更新されますので、毎年必ず確認する必要があります。
定義
「最低賃金制度」とは「最低賃金法」に基づき国が賃金の最低額を定めたもので、1人以上の従業員をもつどんな事業主でも、最低賃金の金額以上の賃金を労働者に支払わなければいけないとする制度です。※厚生労働省開設の最低賃金に関する特設サイトはこちら。
「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類の定めがあります。
地域別最低賃金
都道府県ごとに定められた最低賃金で、年齢や正社員、契約社員、パート、アルバイト、嘱託などの雇用形態に関わらずすべての労働者に適用されます。
特定(産業別)最低賃金
特定の産業を対象に定められた最低賃金で、「地域別最低賃金」よりも高い金額となります。
例)北海道→乳製品製造業、愛知県→自動車小売業など。
「特定(産業別)最低賃金」は特定地域内の特定産業の基幹的労働者に適用されます。この場合の基幹的労働者には、18歳未満または65歳以上の労働者、その他該当産業に特有の軽易な業務を行う労働者などは含まれません。
上記の2つの最低賃金が同時に適用される労働者の場合、事業主はどちらか高いほうの最低賃金額以上の賃金を支払う必要がある、ということになります。
派遣労働者の場合の最低賃金
派遣される事業場が複数の都道府県をまたいでいる派遣労働者の場合、派遣元ではなく派遣先の都道府県の最低賃金が適用されます。そのため、派遣会社の使用者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金額を必ず確認する必要があります。
最低賃金の減額の特例
事業主が都道府県労働局長の許可を得ることによって、個別に最低賃金が適用されない減額の特例を受け、雇用機会を広くし、様々な労働者を受け入れることができます。減額特例の適用が可能な条件は以下となります。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
※ 項目: 厚生労働省HP引用

最低賃金の確認方法
対象となる賃金の範囲
「最低賃金」といったとき、その中に含まれる賃金と含まれない賃金があります。簡単にいうと、労働者に毎月支払われる賃金のうち基本的な賃金のみが対象となり、残業代やボーナスなどは対象外となります。具体的に対象とならない賃金は以下となります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
※項目:厚生労働省HP引用
地域別最低賃金
地域別最低賃金は、各都道府県ごとに、時間額で定められています。
※令和5年10月に改訂された地域別最低賃金の詳細は厚生労働省HPでご確認下さい。<該当ページ>
特定(産業別)最低賃金
特定(産業別)最低賃金は、基本的には時間給で最低賃金が定められていますが、一部、時間額と日額の両方で設定されています。※特定(産業別)最低賃金は厚生労働省HPでご確認下さい。<該当ページ>
最低賃金の計算方法
固定給の場合
- 時間給の場合 時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 日給の場合 日給 ÷ 1日の平均所定労働時間=時間額 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 月給の場合 月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間=時間額 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 基本給が日給で各手当が月給の場合は、それぞれ日給の場合・月給の場合の計算方法で時間額を算出したものを加算し算出した時間額を最低賃金と比較します。
出来高払制の場合
基本給(保障給)と歩合給でそれぞれ時間額を算出し、それらを加算して算出した時間額を最低賃金と比較します。歩合給は、その算定期間における総労働時間で除して算出される時間額を最低賃金と比較します。

最後に
最低賃金は毎年10月に法改正されます。労働の対価である賃金は最低賃金を下回ることは原則認められません。最低賃金を下回る金額で支払いがされていることが発覚した場合、罰則(罰金50万円以下)が設けられています。さらには下回っている部分の未払い賃金を最長5年分(当分の間は3年分)さかのぼって支給しなくてはなりません。「最低賃金制度」をしっかりと理解して労使トラブルや罰則の対象とならないように気をつける必要があります。
また毎年の最低賃金の改正を賃金見直しのきっかけとし、さらには会社全体での人件費の割合の見直しなども行う機会にしましょう。今後も毎年、最低賃金の引き上げが行わる可能性が高いので、前もって賃金設計を行いましょう。最低賃金制度や経営に関するご相談などお気軽にお問い合わせ下さい。