被保険者の範囲
このお役立ち情報のポイント
- 被保険者に関して理解しましょう。
- 労災保険・雇用保険・社会保険の被保険者の種類と要件・適用範囲について理解しましょう。
- 従業員を雇用した際、正しく各保険の手続きを行い、金銭的なトラブル・労使間のトラブルを防ぎましょう。
被保険者とは
「被保険者」とは、雇用主が従業員を雇用した際に、要件を満たし各保険に加入することが必要となる人、各保険に加入し必要な保険給付を受けることができる人のことをいいます。各保険の適用事業所の労働者は(適用除外に該当する場合を除いて)国籍・性別・年齢・賃金の額に関わらずすべての人が被保険者となります。※「各保険の適用事業所」の詳細につきましては、別記事「お役立ち情報:保険適用事業とは」をご参照下さい。
各保険の加入要件、被保険者の適用範囲を、労災保険、雇用保険、社会保険(健康保険・厚生年金)にわけてみていきましょう。
労災保険について
労災保険とは
就業中(業務上)もしくは通勤中の事故によりケガや病気になった場合に、療養・休業・障害・死亡に対し、被災労働者やその遺族を保護するために必要な保険給付を行う制度です。労災保険料は、全額事業主負担となります。労災保険は、労働者を1人でも雇用する場合、その労働者の雇用形態に関わらず、すべての事業所が「強制適用事業所」となります。労災の適用事業所となった場合には、年度毎に労働保険を計算の上、労働保険料を事業主が納付するため、新しい従業員が入社するたびに手続きを行うことはありません。※労災保険の適用事業所に関する詳細は「お役立ち情報:保険適用事業とは」をご参照下さい。
労災保険の被保険者の範囲
労災保険の被保険者の適用範囲は、以下のようになります。
雇用形態 | 被保険者の取り扱い |
一般労働者(パートタイム労働を含む) | 適用する(時間・日数・期間は問わない) |
アルバイト労働者 | 適用する |
日雇い労働者 | 適用する |
派遣労働者 | 派遣元にて適用する |
法人の役員(※1) | 代表権・業務執行権をもつ役員は適用しない |
海外出張者 | 適用する(※2) |
海外派遣者 | 適用しない(※3) |
外国人労働者 | 適用する |
在籍型出向労働者 | 出向先にて適用する |
兼業・副業労働者 | それぞれの事業所にて適用する |
※1)役員であっても、業務執行権を持たない者、または、指揮命令を受け賃金を受け取る者は原則「労働者」として取り扱われます。
※2)日本国内の事業に所属し、その事業所の使用者の指示に従って勤務する者をいいます。
※3)海外の事業場に所属し、その事業の使用者の指示に従って勤務する者は派遣者となり、日本国内法の労働者とは認められないため原則適用しません。しかし特別加入により給付を受けられる制度(下記参照)もあります。
特別加入制度
労災保険には特別加入制度というものがあります。特別加入制度の適用範囲は以下となります。
- 中小企業の事業主等
- 一定の要件を満たす中小企業(法人)の役員
※特別加入するためには労働保険事務組合の委託が必要
- 一定の要件を満たす中小企業(法人)の役員
- 1人親方その他の自営業者
- 労働者を使用しないで事業を行うことを常態とし、その事業に従事する者
- 特定作業従事者
- 特定農作業従事者
- 指定農業機械作業従事者
- 国又は地方公共団体が実施する訓練従事者
- 家内労働者及びその補助者
- 労働組合等の常勤役員
- 介護作業従事者および家事支援従事者
- 芸能関係作業従事者
- アニメーション制作作業従事者
- 情報処理システムに関わる作業従事者
- 海外派遣者
- 日本国内の事業主から海外で行われる事業に労働者として派遣される者
- 日本国内の事業主から海外にある中小規模の事業に事業主等として派遣される者
上記の適用範囲に該当する場合は、労災保険の特別加入が可能です。特別加入制度の適用範囲および特別加入の際の手続き等の詳細に関しては、厚生労働省HPをご参照下さい。
雇用保険について
雇用保険とは
主に求職者給付、教育訓練給付、育児介護休業時、労働者の失業や、雇用が困難となったときの労働者の生活や雇用の安定を維持するための保険給付、また再雇用の支援のための保険給付を行う制度です。雇用保険の保険料は、事業主と労働者それぞれの負担となります。労働者負担分の保険料は、雇用保険被保険者である労働者の毎月の賃金からの控除となります。雇用保険は、短時間労働者で一定条件を満たさない場合を除いて、労働者を1人でも雇用する事業所はすべて「強制適用事業所」となります。 ※雇用保険の適用事業所に関する詳細は「お役立ち情報:保険適用事業とは」をご参照下さい。
雇用保険の被保険者の種類と要件
雇用保険の被保険者の種類は全部で4つあります。それぞれの要件は以下のようになります。
被保険者の種類 | 要件 |
1.一般被保険者 | 2~4の被保険者に該当しないすべての被保険者で、主に正社員、非正規社員、派遣労働者、継続雇用のパートとアルバイトがあてはまります。 |
2.高年齢被保険者 | 65歳以上の被保険者で、かつ3および4に該当しない被保険者です。 |
3.短期雇用特例被保険者 | 季節的に雇用される、もしくは短期の雇用につくことを常態とする被保険者です。 |
4.日雇労働被保険者 | 日々雇用される場合、もしくは30日以内の期間を定めて雇用される場合、一定の要件に該当する被保険者です。 |
雇用保険の被保険者の範囲
雇用保険の被保険者の適用範囲は、以下のようになります。
雇用形態 | 被保険者の取り扱い | |
適用する | 適用しない | |
一般労働者・アルバイト・パートタイム労働者 | (1)週20時間以上の就労 かつ (2)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる ※本人の希望の有無に関わらず |
(1)週20時間未満の就労 または (2)31日以上の継続雇用が見込まれない |
学生 |
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原則適用なし |
有期雇用労働者(期間を定めて雇用) | (1)季節的事業に雇用 かつ (2)4カ月を超えて雇用 かつ (3)週30時間以上の就労 |
季節的事業に雇用されている者で (1)4カ月以内の雇用 または (2)週20時間以上、週30時間未満の就労 |
日雇い労働者 | 日雇労働被保険者に該当する者 日々雇用される場合、もしくは30日以内の期間を定めて雇用される場合、一定の要件に該当する被保険者 |
日雇労働被保険者に該当しない者 |
派遣労働者 | 以下の要件を満たす場合、派遣元にて適用 (1)週20時間以上の就労 かつ (2)反復継続して派遣就業する者 |
(1)週20時間未満の就労 または (2)反復継続して派遣就業を行わない者 |
法人の役員 | 労働者的性格があれば「兼務役員」として適用となる可能性あり | 原則、適用なし |
海外出張者 | 適用事業所で雇用される者が国外において就労する場合、その労働者が出張または派遣されて就労する場合に限る | 現地採用者は適用なし |
社会保険(健康保険・厚生年金)について
社会保険とは
社会保険とは、主に健康保険、厚生年金保険等を総称した会社員を対象とした保険制度です。健康保険は、業務外の病気や怪我の治療、出産に関わる費用などを保険給付する制度です。厚生年金保険とは、公的な年金制度で、加入期間や報酬により基礎年金である国民年金に上乗せされる年金制度です。年金制度の主な種類は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つの給付となります。社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は、 事業主と労働者それぞれ折半での負担となります。 労働者負担分の保険料は、 社会保険被保険者である労働者の毎月の賃金からの控除となります。 ※社会保険の適用事業所に関する詳細は「お役立ち情報:保険適用事業とは」をご参照下さい。
社会保険の被保険者の種類と要件
社会保険の被保険者の種類とそれぞれの要件は以下のようになります。
被保険者の種類 | 被保険者の取り扱い | |
被保険者となる | 被保険者とならない | |
1.一般被保険者 |
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2.日雇特例被保険者 |
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※1)特定3/4未満短時間労働者の場合
被保険者となるためのパートタイマー・アルバイトの要件を満たさない場合、つまり1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、もしくは1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、以下の5つの要件を満たす場合は、被保険者となります。※下記の図でご確認下さい。
5つの要件:
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超える雇用期間が見込まれる
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 学生でない
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めている(国・地方公共団体に属するすべての適用事業所を含む)
※特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数に応じた事業所規模によって決定されます。令和3年11月現在では、従業員数501人以上の企業、令和4年10月以降は従業員数101人以上の企業、令和6年10月以降は従業員数51人以上の企業となります。
これらをすべて満たす場合、被保険者となります。
最後に
従業員を雇入れた際に、その従業員が保険の加入要件を満たす場合、従業員の各保険の手続きをするのは事業主としての責務となります。その従業員が保険の加入要件を満たしているにも関わらず、各保険に未加入のまま働かせるのはとてもリスクのあることだと認識しましょう。
例えば、従業員の退職に伴い、その従業員が失業給付の受け取りを要求した場合、雇用保険加入要件を満たしているにもかかわらず加入していなかったという保険請求の場面で、会社側のミスがハローワークへ報告され公になってしまうことで、会社の心証を損ねる結果となってしまいます。
社会保険や雇用保険の適用調査が入った場合には、加入の必要があった時点までさかのぼっての手続きや保険料の支払い手続きなど面倒な作業が必要となったり、従業員からの保険料の徴収も高額になればなるほど困難になり、結果、会社側が負担せざるを得なくなってしまうという事態にまで発展する可能性があります。
労働者を雇い入れる際に、最初からしっかりと正しい手続きを行うことにより、リスクを減らすことが出来ます。各種保険加入の面倒な手続きは、弊社、阪神労働保険事務センターにお任せください。労働保険(=労災保険+雇用保険)に関するお手続き代行・ご相談は労働保険事務組合である弊社へ、そして社労士事務所も併設しておりますので、社会保険の新規適用のお手続き関するご相談も、ぜひ弊社までお気軽にお問合せ下さい。