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お役立ち情報

扶養の壁

このお役立ち情報のポイント

  1. 扶養の壁とはなんでしょう。まずは「扶養」から理解しましょう。
  2. 各金額別の扶養の壁を確認していきましょう。
  3. 個人としてだけでなく、会社としても扶養制度をしっかりと理解して働きやすい環境作りをしましょう。

「扶養の壁」とは

「扶養の壁」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。この言葉は、主に、ご家族が会社員や公務員でその方の扶養に入ることで税金に関する控除を受けていたり、社会保険の被扶養者として給付金などの補助を受けられるなど経済的な支援を受けている方が耳にしたことのある言葉ではないでしょうか。

事業主からすると、年末に近づくにつれて、会社に提出する必要のある年末調整資料の作成や被扶養者の確認のための資料の準備の際などに「被扶養者の要件に当てはまっているのか」や「扶養範囲内で働くためにシフトを抑えてほしい」などと従業員から要望を受けたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一言で「扶養範囲内の金額」といっても、法改正や考え方によって扶養の金額が変わりますので、この「扶養の壁」について金額別に整理していきましょう。

「扶養」とは

「扶養の壁」の各金額の壁の説明に入る前に、まずはこの「扶養」という言葉について少し確認しておきましょう。注意していただきたい点もありますのでチェックしてくださいね。

  1. 扶養とは、自身で生計を立てるのが困な方が家族や親族からの経済的な援助を受けることをいいます。
  2. 扶養の概念には「税法上の扶養」「社会保険上の扶養」の2つの考え方があります。
  3. 「税法上の扶養」において、扶養の範囲を定める「所得」を考える際には「課税支給額」を見て判断します。つまり通勤手当(交通費)としての支給は「非課税支給」であることが多いため、税法上、通勤手当などの「非課税支給」は「所得」には含まれないことになります。
  4. 一方「社会保険上の扶養」において、扶養の範囲を定める「所得」を考える際には、通勤手当などの「非課税支給」も「所得」に含まれます
  5. 「税法上の扶養」における「収入」は過去の収入実績から計算しますが、「社会保険上の扶養」における「収入」は一概に過去の実績だけでなく、将来の見込み額も考慮して考えることもあります。
扶養とは

注意したい用語

「扶養の壁」を考える上で気を付けたい用語としてあげられるのが「収入」と「所得」です。「収入」とは、給与として収入を得ている場合には、源泉所得税や社会保険料などが控除される前の「総支給額」をいいます。また「所得」とは「収入」から必要経費を引いて残る金額をいうため、給与を得ている会社員に置き換えると、「給与所得」とは「総支給額」から「所得控除」を引いたもの、ということになります。

さらに「所得控除」には、全ての納税者が受けられる「基礎控除」や「給与所得控除」等があります。所得控除は所得金額に応じて決定されますが、参考までに「基礎控除」は所得2400万円以下までは48万円の控除が受けられます。また「給与所得控除」は収入162万5000円まで55万円の控除が受けられます。

「扶養の壁」について確認する上でこれらの用語が必ずでてきますので、その意味するものに注意してみましょう。

金額別の扶養の壁

「扶養の壁」には、100万円の壁、103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁というように5つの壁があります。この「壁」というのは被扶養者として家族や親族から経済的な支援を受けられるかどうかを決める基準となります。それぞれの壁について、その金額を超えて「収入」を得た場合にどうなるかみていきましょう。

100万円の壁

住民税

家族や親族の扶養者となっている方の年収が100万円を超えた場合、住民税の課税対象となります。この場合は、「税法上の扶養」についていっているので、年収100万円には通勤手当などの非課税金額は含まれません。また、働く地域の自治体により多少の差があるため、一概にきっかり100万円とは言えないのですが、おおよそ93万円~100万円の範囲が基準となることが多くあります。年収100万円を超えると住民税を支払う義務が発生しますので、注意しましょう。

103万円の壁

所得税

家族や親族の扶養者となっている方の年収が103万円を超えた場合、所得税の課税対象となります。この場合は、「税法上の扶養」についていっているので、年収103万円には通勤手当などの非課税金額は含まれません。所得税は毎年1月~12月までの「所得」に対してかかる税金となります。これは1年間の「総支給額」から「所得控除」をひいて算出された「給与所得」、つまり課税所得額に対して税率をかけて算出します。「所得控除」の1つに基礎控除(48万円)というものがあります。これは所得税額を算出する際に「総支給額」から控除できる金額となります。つまり基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合わせると103万円となるので、年収103万円までは、これらの控除により所得税はかからない仕組みになっています。

年収が103万円を超えた場合には、下記の表のように所得税率と所得税控除額で算出されますので参考にしてください。

課税所得額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

納税者の扶養控除

扶養控除とは家族や親族などを経済的に支える納税者を対象に、税金の支払いにおいて少しでも負担を軽減するための税策です。納税者が所得税法上における扶養親族がいる場合、一定の金額の所得控除が受けられます。扶養控除の対象となる扶養親族は、納税者と生計を一つにしている親族のうち、16歳以上の親族のことをいいます。また、控除額は扶養親族の年齢や同居の状況によってことなります。

例えば、父子家庭の場合、父親(納税者)がフルタイム社員、子(16歳以上)がアルバイトなどのパートタイム労働者だった場合、子の給与年収が103万円以下であれば、父親の所得税が扶養控除により低くなります。
※控除額については、国税庁の該当ページをご参照下さい。

ここで注意!
扶養親族が納税者の配偶者である場合、配偶者控除もしくは配偶者特別控除が受けられます。配偶者控除については年収103万円までの上限がありますが、さらに年収が900万円以下の納税者の配偶者については配偶者特別控除があるため、配偶者は年収150万円までは同額の所得控除を受けることができます。

106万円の壁

社会保険料

被保険者の扶養親族が、特定適用事業所(社会保険被保険者数が一定人数以上の企業)で勤務する場合には社会保険(健康保険+介護保険+厚生年金)の加入義務が発生し、被保険者となる可能性があります。以下の4つの要件全てに該当した場合には、社会保険の被保険者となり、社会保険上の扶養親族となることができなくなります。

  • 週の所定労働時間20時間以上
  • 月額賃金88,000円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

上記の2つ目の要件にある「月額88,000円以上」を計算してみるとおおよそ年収106万円となります。
社会保険の適用事業所、及び被保険者の範囲については別ページを参照下さい。

130万円の壁

社会保険料

社会保険料の被扶養者の認定要件に「認定対象者の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)」という収入要件があります。そのため、扶養親族の年収が130万円以上となった場合、扶養からはずれるかたちとなります。

この被扶養者の年収要件は、社会保険上における話となるため、非課税の収入や手当も含まれます。雇用保険の失業等給付や公的年金、健康保険の傷病手当金、出産手当金等の今後も継続して得られる手当等も含まれます。また、過去の収入、現在の収入、将来の見込み収入などから、今後1年間の収入を見込んで算出します。見込み部分で考えることも必要なため、雇用契約書などの見直しも必要となります。

150万円の壁

納税者の配偶者特別控除

扶養親族が納税者の配偶者であり、その配偶者の年収が103万円を超えてしまった場合、さらに配偶者特別控除があるため、納税者は配偶者の年収150万円までは同額の所得控除を受けることができます。納税者の年間所得に応じて配偶者控除の金額が異なります。以下の表を参考にして下さい。

  控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下









48万円超 95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超 100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超 105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超 110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超 115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超 120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超 125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超 130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超 133万円以下 3万円 2万円 1万円

給与所得控除(55万円)と上記の表内にある「配偶者の合計所得金額」の一番上の条件である95万円を合わせると150万円となるので、年収150万円までは、これらの控除により所得税はかからない仕組みになっています。

このように段階的に、扶養親族として適用されるか否かの金額の壁があります。再度、各金額の壁を越えてしまった場合にどのような支払いが増えるのかを確認し、扶養に入り続けるのがよいのか、もしくは扶養からはずれたとしてもそれをカバーできるくらいの収入を得るのがよいのか、家族などで話し合ったみるのもよいですね。

扶養の壁のイメージ

最後に

「税法上の扶養」も「社会保険上の扶養」も、扶養の適用範囲は縮小傾向にあります。法改正があるとこれらの金額の壁も変化していく可能性があります。従業員の中には扶養範囲内で働くことにこだわる人もいれば、家庭環境が変化することで扶養にこだわらない働き方を選ぶ人もいます。

年末のこの時期は、扶養に関する書類を作成することも多くなり、この「扶養の壁」について従業員から質問されることも多くなるかと思いますので、今一度、扶養制度について見直し、きちんと従業員に説明ができるようにしておきましょう。また、働きやすい会社を作っていくためにも、従業員の声に耳を傾け、会社にとっても従業員にとってもプラスとなる「働きやすさ」を見つけていきましょう。

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