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法改正

【令和4年4月施行】女性活躍推進法

今年3月ハンガリーで初の女性大統領が就任したり、女性の首相が昨今の感染症によるパンデミックのさ中大きく活躍し世界的に注目されたりするなど、世界的に社会の場で活躍する女性が増えてきました。私たちの身近でも職業生活において活躍の場を得て企業やビジネスを大きく動かす女性たちが増えてきたように思います。1990年代から日本国の専業主婦世帯と兼業主婦世帯の割合が同等となり、それが2014年以降は専業主婦世帯が約40%、兼業主婦世帯が約60%と大きく兼業主婦世帯が増えました。まだまだ日本は世界に比べて男女の雇用機会や活躍の場が少ないといわれていますが、2015年(平成27年)8月28日に成立した「女性活躍推進法」といくつかの法改正によって今後さらに女性の活躍の場が増えることが期待されます。今回は令和4年4月1日に施行となる「女性活躍推進法」の法改正に関して紹介していきます。

女性活躍推進法とは

「女性活躍推進法」とは正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といわれ、2015年(平成27年)8月28日に成立しました。日本は男女格差の大きな国としてはとても有名で、世界経済フォーラム(WEF)で発表のあった世界ジェンダーギャップ報告書においても、先進国の中で飛びぬけて男女格差あるといわれています。そのような状況を打開し、働く女性の活躍の場を増やし職業生活の中での男女格差をなくすための法律として、平成28年度~平成37年(令和7年度)までの10年間の時限立法として施行されました。女性が働くことを自らの意思で選び、個性や能力が十分に発揮されることが豊かで活力のある社会の発展において重要であるとされ、それがさらには国の発展につながると期待されています。以下の基本原則に従って、女性の職業生活における活躍を推進しています。

(厚生労働省資料抜粋)

  • 女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
  • 職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
  • 女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと

それでは、「女性活躍推進法」について詳しくみていきましょう。

基本方針の策定

2015年(平成27年)8月28日、職業生活において女性の活躍の場を増やすことを推進するための基本方針が閣議決定により策定されました。これによって仕事で個性や能力を発揮し活躍したいと願う女性の活躍推進に向けた行動計画や数値目標の設定や公表が、国や地方公共団体・民間企業等を対象に義務付けられました。

事業主行動計画の策定・情報公表

国や地方公共団体・民間企業等で常用労働者301人以上の事業主に対して、女性の職業生活における活躍を推進するために「事業主行動計画」の策定・公表を実施することが義務付けられています。令和4年4月1日に施行される法改正で、常用労働者が301人以上から101人以上へ変更となり、「事業主行動計画」の策定・公表の義務の対象となる企業が拡大されます。「一般事業主行動計画」の策定・情報公表における具体的なステップは、別の項目でご紹介します。

女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置

女性の職業生活における活躍を推進するために、主に以下のような支援措置の実施に対する努力義務が定められています。※女性活躍推進法第4章一部抜粋

<職業指導等の措置等>

  • 国は、女性の職業生活における活躍を推進するための職業指導や職業紹介、職業訓練、創業の支援、その他の必要な措置を講ずる
  • 地方公共団体は、職業生活における活躍を望む女性及びその家族、その他の関係者からの相談への対応、関係機関の紹介、その他の情報の提供、助言、その他の必要な措置を講ずる(内閣府令で定める基準に適合する者に委託可能)

<財政上の措置等>

  • 国は、女性の職業生活における活躍の推進のための地方公共団体の施策を支援するために必要な財政上の措置、その他の措置を講ずる

<協議会>

  • 国及び地方公共団体の機関は、女性の職業生活における活躍の推進に関する取り組みが効果的かつ円滑に実施されるようにするための協議を行う「協議会」を組織することができる。

その他、啓蒙活動、情報の収集、整理及び提供に関する支援措置についても記載があります。詳細については女性活躍推進法をご確認下さい。

優良企業認定「えるぼし認定制度」

女性の職業生活における活躍を推進するための「一般事業主行動計画」において優れた取り組みを行う一般事業主をある要件によって認定する「えるぼし認定制度」及び「プラチナえるぼし認定制度」を実施しています。

「えるぼし認定」の流れ

「えるぼし認定」がされるまでの流れは以下のようになります。

一般事業主⾏動計画の策定・届出
ステップ1:⾃社の女性の活躍に関する状況の把握、改善すべき事情についての分析を行う
ステップ2:定量的目標や取り組み内容などを内容とする「事業主行動計画」の策定及び社内周知、外部公表を行う
ステップ3:一般事業主⾏動計画を策定した旨、該当する都道府県労働局へ届出を行う

⼥性の活躍に関する情報・状況について「⼥性の活躍推進企業データベース」へ登したり、⾃社のホームページ等に掲載することによって公表する。

えるぼし認定の申請
女性の活躍を推進する取り組みに対して、一定の要件(評価基準)を何項目満たしているかによって、「3段階のえるぼし認定」が行われます。「えるぼし認定」の3段階のうちのいずれかを受けた優良企業は、さらに上をいく、ある一定の要件を満たした場合に「プラチナえるぼし認定」が行われます。

えるぼし認定の評価基準

女性の活躍を推進するための事業主行動計画とその実施そしてそれによる実績について、以下の5つの項目が「えるぼし認定」の評価基準となります。

  1. 採用状況
    男⼥別の採用における争倍率、正社員に占める⼥性労働者の割合などが評価の基準となります。
  2. 継続就業
    男性労働者の平均継続勤務年数に対する⼥性労働者の平均継続勤務年数が7割以上、もしくは男性労働者の継続雇用割合に対する女性労働者の継続雇用割合が8割以上であることが評価の基準となります。
  3. 労働時間等の働き⽅
    法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が各月45時間未満であることが評価基準となります。
  4. 管理職⽐率
    管理職に占める⼥性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること、もしくは直近3事業年度における女性の出世率が男性の出世率の8割以上であることが評価基準となります。
  5. 多様なキャリアコース
    以下の項目のうち、常用労働者301人以上の事業主は2項目以上、300人未満の場合は1項目以上の実績があることが評価基準となります。
    • ⼥性の非正社員から正社員への転換(派︓雇入れ)
    • ⼥性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
    • 過去に在籍した⼥性の正社員としての再雇用
    • おおむね30歳以上の⼥性の正社員としての採用

※各評価基準の詳細については、「えるぼし認定に関するパンフレット」をご確認下さい。

「プラチナえるぼし認定」に対する評価基準については、項目1、3、5については「えるぼし認定」と同様となりますが、項目2については、男性労働者の平均継続勤務年数に対する⼥性労働者の平均継続勤務年数が8割以上、もしくは男性労働者の継続雇用割合に対する女性労働者の継続雇用割合が9割以上であることが必要となります。また項目4については、管理職に占める⼥性労働者の割合が産業ごとの平均値の1.5倍以上という評価基準となっています。

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の概要

○えるぼし認定1つ星(1段階目)

女性の活躍を推進するための事業主行動計画とその実施そしてそれによる実績の評価基準となる5つの項目の1つまたは2つを満たし、その実績を「⼥性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。満たさない項目があった場合は、2年以上連続してその実績が改善していることが必要となる。

○えるぼし認定2つ星(2段階目)

女性の活躍を推進するための事業主行動計画とその実施そしてそれによる実績の評価基準となる5つの項目の3つまたは4つを満たし、その実績を「⼥性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。満たさない項目があった場合は、2年以上連続してその実績が改善していることが必要となる。

○えるぼし認定3つ星(3段階目)

女性の活躍を推進するための事業主行動計画とその実施そしてそれによる実績の評価基準となる5つの項目の全てを満たし、その実績を「⼥性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。

◎プラチナえるぼし認定
以下の主な評価基準を満たしている必要があります。
1. 適切な一般事業主⾏動計画の策定及びそれに基づく取り組みの実施、さらには当該⾏動計画に定めた目標を達成すること。
2. 男⼥雇用会機会均等推進者、職業家庭両⽴推進者を選任し、その選任状況を「⼥性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。
3. 女性の活躍を推進するための事業主行動計画とその実施そしてそれによる実績の評価基準となる5つの項目の全てを満たし、その実績を「⼥性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。
4. ⼥性活躍推進法に基づく情報公表項目(社内制度の概要を除く。)のうち、8項目以上を毎年「⼥性の活躍推進企業データベース」に公表していること。

「えるぼし認定」もしく「プラチナえるぼし認定」をされた優良企業は、厚⽣労働大臣が定める認定マークを自社の商品や制服、名刺、広告など定められた場所に付けることが出来、女性の職業生活における活躍を推進する優良企業であることをPRすることができます。それによって優秀な人材の確保や企業のイメージアップにつながるだけでなく、公共調達や⽇本政策⾦融公庫による融資制度の優遇措置などが受けられます。

優良企業に認定されてグッドポーズをしている社員

令和4年4月施行の法改正

法改正の概要

令和4年4月1日以降、女性の職業生活における活躍を推進する取り組みとして掲げられている一般事業主行動計画の策定及び社内周知、外部への情報公表の対象が、常用労働者が301人以上の大企業から101人以上300人以下の中小企業も含まれるかたちで拡大されます。

一般事業主行動計画の策定・情報公表におけるステップ

以下の流れで「一般事業主行動計画」の策定及び情報公表を行います。

ステップ1
女性の活躍に関する状況の把握、改善すべき事情についての分析を行います。状況把握・課題分析を行う際に必ず把握するべき項目は以下となります。

状況把握・課題分析する基礎事項:
・女性採用比率 (雇用管理区分ごと※)
・勤続年数男女差(雇用管理区分ごと※)
・平均残業時間数等の労働時間の状況
・女性管理職比率
※雇用管理区分とは、職種、資格、雇用形態、就業形態等の労働者の区分をいいます。
例えば、正社員、契約社員、パートタイム労働者/事務職、技術職、専門職、現業職などがあります。

上記の基礎項目を確認することにより状況把握を行い、改善すべき事情、課題等を分析しましょう。これらの基礎項目に加えて、会社の実情に応じて把握することが効果的である選択項目(7項目)があります。選択項目の詳細については、一般事業主行動計画策定パンフレット(6ページ目)をご参照下さい。

例えば基礎項目の「女性採用比率」について、採用した労働者に占める女性労働者の割合が40%未満であるということが分かった場合、「女性労働者が少ない」または「女性の応募者が少ない」ということが課題に挙げらるため、それに対する取り組み内容や定量的な行動目標を立てる必要がある、ということになります。その他、状況把握を基にした課題分析の方法、課題に対する取り組みの参考例は、一般事業主行動計画策定パンフレット(8 ページ目)をご参照下さい。

このように、状況把握に続いて改善すべき事情、課題の分析に対する定量的目標や取り組み内容などを内容とする「事業主行動計画」の策定・情報公表を行います。

ステップ2
「一般事業主行動計画」を策定し、「社内周知」と「外部公表」を行いましょう。「一般事業主行動計画」に記載する必須事項は以下となります。

必須記載事項:
・目標(定量的目標)
・取り組み内容
・実施時期
・計画期間

「外部公表」を行う場合は、女性の活躍推進企業データベースへの登が便利です。女性の活躍推進企業データベースへの情報登は、「えるぼし認定制度」の条件にもなっています。

ステップ3
策定した「一般事業主行動計画」を厚生労働省のホームページ記載の様式を利用して、都道府県労働局に届け出を行いましょう。

ステップ4
「一般事業主行動計画」で策定された取り組みを実施し、定期的に数値目標の達成状況や効果を測定しましょう。その結果に応じて再度ステップ1へ戻って、再度、状況の把握、改善すべき事情についての分析を行いましょう。

最後に

日本社会において働く女性の現状としては、まだまだ課題は山積しています。例えば、以下のような問題があげられるかと思います。

  • 出産を機に退職しなくてはならない
  • 出産、育児後の再雇用時には正社員ではなく、非正規としての雇用となってしまう
  • 女性の管理職の割合が低い、また出世できる可能性が低い
    など

女性の雇用環境を整備することによって、今までよりもさらに労働力を確保することが出来るようになります。そのためには、労働環境整備・職場風土の改善など即時に解決できない課題も多いため、出来ることから少しずつ日々改善していくことが必要でしょう。

また「女性活躍推進法」自体も10年間の時限措置であり、期間中にはさまざまな行政支援策が出ることが予想されます。事業主様はそういった情報を逃さずキャッチして、うまく制度を利用しましょう。
ご不明な点やご相談がございましたらいつでも弊社へお問い合わせ下さい。

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