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法改正

【令和4年1月施行】マルチジョブホルダー制度(65歳以上)

日本の高齢化は年々進んでおり、全国民における高齢者(65歳以上の人)の割合は2020年で28.8%、2021年ではさらにそれを上回る29.1%と全体の約3割の方が高齢者というデータが出ていました。内閣府発行の令和3年度版高齢社会白書によると、2020年の労働力人口が6,868万人、そのうち65~69歳の者は424万人、70歳以上の者は498万人となり高齢者の割合は全体の約13%にもなります。この割合も年々増加しているため、高齢者の労働力も国の経済を支えているといえますし、働く高齢者の社会保障制度についても常に見直しと法改正が必要な現状となっています。今回ご紹介する「雇用保険マルチジョブホルダー制度」も働く高齢者の生活を支える社会保障制度の1つですので、高齢者を従業員として雇用されている事業主の皆様は、ぜひご覧下さい。

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは

制度の概要

2012年に法改正、2013年に施行された高年齢者雇用安定法では、労働者の定年延長によって60歳から65歳までの雇用確保は事業主の義務であるとされました。また2021年に施行された同法律の改正では、65歳から70歳まで就業機会の確保は事業主の努力義務であるとされました。このように働く高齢者に関する法令は、日々変化し続けています。令和4年1月1日に施行された「マルチジョブホルダー制度」もその1つです。

「マルチジョブホルダー制度」とは、複数の事業所で働く65歳以上の労働者が、特例的にある一定条件下で雇用保険被保険者(マルチ高年齢被保険者)となれる制度です。雇用保険の被保険者の範囲は、原則として①週20時間以上の就労、②31日以上引き続き雇用されることが見込まれるという条件を満たすことが必要となります。これに対して「マルチジョブホルダー制度」が適用される場合、勤務する複数の事業所のうち2つの事業所での勤務を合計してある一定の条件を満たす場合に、ハローワークに申請を行うことによってマルチ高年齢被保険者となることができます。
※雇用保険の概要・適用範囲については「お役立ち情報:被保険者の範囲」をご参照下さい。

適用条件

「マルチジョブホルダー制度」の適用条件は以下となります。

  • 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
  • 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

この条件をすべて満たした場合、マルチ高年齢被保険者として雇用保険に加入することができます。また、3つ以上の事業所で勤務している場合はそのうち上記の条件を満たすことのできる2つの事業所を、マルチ高年齢被保険者となることを希望する労働者自身が選択することによって申請手続きを行います。それでは、次項にて具体的な申請手続きの方法について紹介していきましょう。

申請手続き

「マルチジョブホルダー制度」を利用することの出来るマルチ高年齢被保険者への申請方法は以下となります。

申請の基本情報

  1. 申請者
    マルチ高年齢被保険者となることを希望する労働者本人
  2. 資格取得日
    ハローワークに申し出を行った日(郵送の場合は書類がハローワークに到着した日)※申出日より前に遡って被保険者となることはできませんのでご注意下さい。
  3. 申請書の提出先
    労働者の住所または居所を管轄するハローワーク
    ※電⼦申請での届出は⾏っておりませんのでご注意下さい。
  4. 提出書類①資格取得の場合
    1. 雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)
      ※各事業所に事業主記載事項の記入を依頼します。
    2. 個人番号登・変更届
      ※マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カードをご用意下さい。
    3. 被保険者資格取得時アンケート
    4. 賃金台帳(直近1か月分)
    5. 出勤簿(直近1か月分)
    6. 労働者名簿
    7. 雇用契約書、労働条件通知書、雇入通知書
      ※4~7の項目については、各事業所・事業主に発行依頼をし交付してもらいます
    8. 本人確認資料
  5. 提出書類②資格喪失の場合
    退職時だけでなく、1社での週所定労働時間5時間未満、20時間以上となった場合にも(マルチジョブホルダー)資格喪失手続きが必要となります。
    1. 雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」(マルチ喪失届)
      ※各事業所に事業主記載事項の記入を依頼します。
    2. 離職証明書
      ※対象となる事業所に発行依頼します。 
    3. 被保険者資格喪失時アンケート
    4. 本人確認書類

具体的な申請の手順

申請は以下の手順で行われます。

ステップ1
上記の必要書類の1~3を申請者ご自身でお近くのハローワークもしくは厚生労働省HPより入手します。※上記必要書類のそれぞれの番号のリンクを押して頂くと各種届出の様式をご覧頂けます。

2社分のマルチ雇入届の申出人記載事項に記入後、該当する2社に事業主記載事項の記入及び上記必要書類の4~7の交付を依頼します。
※申出人記載事項の記入例は雇⽤保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット(4ページ)をご参照下さい。

ステップ2
マルチ高年齢被保険者となることを希望する労働者から申請書の記入及び必要書類の交付の依頼があった事業主は、速やかに申請書の事業主記載事項に記入を行い、必要書類を申出者へ交付します。
※事業主記載事項の記入例は雇⽤保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット(5ページ)をご参照下さい。

ステップ3
申出人の住所・居所を管轄するハローワークへ必要書類をすべて提出します。郵送での提出も可能です。この提出した日から特例的にマルチ高年齢被保険者となります。郵送の場合は書類がハローワークに到着した日からマルチ高年齢被保険者となりますので、簡易書留等の送達記が残る方法で送付するようご留意下さい。

ステップ4
高年齢被保険者の方は住所・居所を管轄するハローワークから交付される、
・雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届(2社分)
・雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得確認通知書(本人通知用)
・雇用保険被保険者証
・被保険者資格喪失時アンケート
を大切に保管して下さい。
高年齢被保険者を雇用する事業主の方は、住所・居所を管轄するハローワークから交付される、「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得確認通知書(事業主通知用)」を保管して下さい。通知書に記載された申出・資格取得年⽉⽇を必ずご確認頂き、この日から雇用保険料の納付義務が発生しますので、必ずご対応下さい。

事業主への注意事項

65歳以上の労働者を雇用する事業主の皆様へ、もしその労働者が「マルチジョブホルダー制度」を利用してマルチ高年齢被保険者となることを希望した場合、以下のことにご注意下さい。

1つ目が、「マルチジョブホルダー制度」への申請はあくまでもマルチ高年齢被保険者となることを希望した労働者自身が行うことになりますが、事業主の皆様においては労働者からの書類作成や交付依頼があった場合には速やかに対応しなければならず、拒否をすることはできません。また、労働者が申し出を行ったことで、不利益な取扱いを受けるということもあってはいけないことなのです。

2つ目が、マルチ高年齢被保険者を雇用している事業主の皆様は、それぞれの事業所でマルチ高年齢被保険者が資格取得をした日から雇用保険料の納付義務が発生しますのでご対応下さい。

3つ目が、労働者が副業・兼業していることや他社に入社または退社したことは、労働者とのコミュニケーションや労働者からの申し出がない限り把握することが出来ず、現状に合った必要な手続きを行うことが出来きません。そのため、事業主の皆様には労働者の就業状況については他社分も含めて把握をして頂き必要な手続きを行ってください

以上のことにご注意頂き、65歳以上の労働者が「マルチジョブホルダー制度」を安心して利用することが出来る環境作りやその後のサポートをお願い致します。

最後に

日本の今までの雇用文化を顧みると、副業・兼業を認めている会社が少なく、働く意欲があり複数の仕事を掛け持ちしてバリバリ働きたい!と思っても、なかなかしいというのが現状です。

今回の雇用保険法の法改正では「試行的」に対象者を高齢者に絞って行われた特例となりますが、この法改正がきっかけとなり、副業・兼業が促進され複数の事業所で働く労働者の新しい社会保障制度を作ることが出来るかもしれません。

こういった、国の経済を支える労働力を国として支えていくための法律や制度は常に見直され改正されていきますので、事業主の皆様には従業員の方々が安心して働くことの出来る環境整備の1つとして、日々こういった情報をキャッチして下さい。また、経営に関するご相談人事労務に関するご相談はぜひ弊社までお問い合わせ下さい。

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