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コラム

社労士が注目する「異次元の少子化対策」とは

将来の人口規模を反映する日本の出生率は、他の先進国に比較しても低迷を続けています。厚生労働省の2023年6月の最新のデータでは、合計特殊出生率が過去最低の1.26となりました。この数値は過去7年間連続で下降傾向にあり、日本の少子化という問題が見て取れます。引き続き、合計特殊出生率の減少が予想される日本、このままでは少子高齢化社会がぐんと加速されてしまう中、いろいろな意味で注目されている「岸田政権」が打ち出した『異次元の少子化対策』をご存じでしょうか。岸田政権が少子化に対して、具体的にどのような対策を打ち出しているのか、現役社労士が気になる対策をピックアップしてみました。

社労士が注目する「異次元の少子化対策」4選

岸田政権が打ち出した『異次元の少子化対策』のうち、中小企業の事業主や従業員に特に影響があるであろうと私達が考える、次の4つに注目してみました。

男性育休の促進:給付金の給付率引き上げ

2025年4月からの実施を目途に検討が進められているのが「男性育休の促進を目的とした給付金の給付率引き上げ」です。この対策の具体的な取り組みは以下の3点となります。

  1. 産後パパ育休や男性育休に対する給付金の給付率を手取り100%になるように引上げ
  2. 育児休業・最大28日間の育児休業給付金の給付率を80%(手取り約100%)へ引上げ
  3. 育児時短就業給付の創設:育児中の時短勤務に対しても給付される制度の創設

この対策では、育児休業の取得に関して、女性が取得することが当たり前である一方で、男性の育児休業の取得はなかなか進まないという現況を顧みて、男性がより育児休業を取りやすいように、環境整備を行う中小企業への支援強化として検討されています。岸田首相は2025年には男性育休取得率を50%に、2030年には80%まで引き上げ、男性も育休を取得することが当たり前となる社会を目標に掲げています。

現在の育児休業給付金の額は給付率67%(手取りの約80%)と、育児休業を取得すると所得額の減少へ繋がり、また休業期間が長期になればなるほど復職へのハードルも高くなる傾向にあります。給付率の引き上げによって所得確保へ繋がり、さらには育児を目的とした時短勤務者への給付も新たに創設されれば、復職もしやすくなります。

労働者の育休取得には会社側の協力が必須となることから、育児休業を取得しやすい体制整備に向けて中小企業への助成措置も検討されているので、見逃さないようにしたいものです。‌

柔軟な働き方改革支援:育児期にも働ける環境整備

少子化対策に欠かせないのが、仕事と子育ての両立支援です。働く世代が、仕事を辞めることなく育児にも専念することが出来るような働き方の環境整備が必要となります。これを目的とした政策の具体的な取り組みは以下の3点となります。

  1. 子供が3歳になるまでテレワーク(在宅勤務)を可能とする会社側の努力義務化
  2. 子の看護休暇の対象を小学校3年生修了時までに拡充・休暇事由範囲の拡充
  3. 育休取得者の周囲社員への応援手当の整備

育児休業の取得がしくなる大きな要因の一つは働き方にあるといえます。そのため育児休業を取得しやすい環境整備が今後は大きな論点となることが予想されます。その反面、中小企業の多くはギリギリの人材でなんとか日々の業務を回しているのが現状です。柔軟な働き方改革支援に関する具体的な実施時期は未定となっていますが、これらの働き方改革が今後、どんどんと加速していくことを視野にいれて、企業は早いうちに出来ることから柔軟に対応していくことが求められます。

児童手当の拡充

2024年10月からの実施を視野に検討が進められているのが「児童手当の拡充」です。この対策の具体的な取り組みは以下の3点となります。

  1. 支給期間を18歳(高校卒業) まで延長
  2. 所得制限の撤廃
  3. 第3子以降には支給額を3万円に増額

現在は、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方を対象に支給されている児童手当ですが、支給額(一人あたり月額)は、以下のようになっています。

  • 3歳未満は一律15,000円
  • 3歳以上小学校修了前まで10,000円(第3子以降は15,000円)
  • 中学生は一律10,000円

さらに一定所得以上の場合には、児童の年齢に関わらず一律5,000円または不支給となることもあります。児童手当の拡充が直接的に国全体の出生率増加に繋がるかどうかについては専門家の間でも意見が分かれているようですが、一世帯当たりの子育て費用は年間100万円以上と言われている中で、月に数万円程度の上乗せで出産の動機付けになるかどうかは疑問です。

出産費用への助成

「異次元の少子化対策」で掲げられた「こども未来戦略方針」のうち子育て世代への経済的支援について、すでに実施もしくは検討されているのが、出産費用への助成です。2023年4月に実施された出産育児一時金の大幅な引上げ(42 万円→50 万円)や産科受診料の助成、そして2026年度を目処とした出産費用(正常分娩)の保険適用の導入が検討されています。

  1. 出産費用の公的保険制度の適用
  2. 出産育児一時金の増額
    ※2023年3月までの出産では健康保険から支給される出産育児一時金は42万円でしたが、2023年4月以降50万円に増額されました。
  3. 出産子育て応援給付金の創設
    ※2022年4月以降に出産された方を対象に、妊娠届出時に「出産応援給付金」5万円が、出生後に「子育て応援給付金」5万円が支給されるようになります。

人生の大きなライフイベントである出産に安心して臨むことが出来る環境整備として、有意義な支援となっているのではないでしょうか。その一方で、社会保険料を財源としている出産育児一時金には後期高齢者医療制度の対象者にも負担を求めていく方針であり、未だ財源確保に問題が残っていることも事実です。

最後に

岸田政権が打ち出した「異次元の少子化対策」は「少子化対策」と一言で表しても、その内容については多岐にわたる対策となっており、今回ご紹介した対策は、ほんの一部に過ぎません。また、少子化対策の影響を受ける各世代の見方や、既婚・未婚などの様々な人々の生活形態に与える影響に対する見方など、国民の声も様々です。

実施時期や具体的な対策についてはまだわからない部分も多くありますが、これらの動きにできる限り注視し、働き方や経済支援に関して私たちも考えていきたいと感じました。中小企業の事業主の皆さんには、これらの動きに伴う支援策を十分に活用してもらいながら、柔軟に対応してもらいたいと考えています。経営や人事労務管理に関するご不明点やご相談などお気軽にお問い合わせ下さい。

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