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コラム

令和4年に施行される法改正ポイント

令和4年に入ってからもうすでに4か月が経とうとしています。事業主の皆さん、労働者の皆さん、日々皆さんの労働環境やお給料、手当等の生活保障に関係する法改正についてチェックしていますか?令和4年になってから「雇用保険法:マルチジョブホルダー制度」や「健康保険法:傷病手当金の支給期間の通算化」など、すでにいくつかの法改正が行われました。令和4年1月、4月、10月に各種法改正が行われ事業主の皆さん、働く皆さんを取り巻く労働環境にも変化があります。今回の記事では、令和4年に施行される法改正のポイントをまとめてご紹介します。ぜひご確認下さい。

令和4年1月施行の法改正

今年1月に施行となった法改正は、雇用保険法及び健康保険法に関する3つの法改正となります。

雇用保険法:マルチジョブホルダー制度(65歳以上)

概要

複数の事業所で働く65歳以上の労働者を対象に、特例的にある一定条件を満たした場合、その労働者が雇用保険に加入することができ、雇用保険被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。

この法改正のポイント!

  • 複数の事業所で働く65歳以上の労働者が、勤務する複数の事業所のうち2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であり、それぞれ事業所での雇用見込みが31日以上である場合、雇用保険への加入が認められます。
  • マルチジョブホルダー制度の申請は必ず、マルチ高年齢被保険者となることを希望する労働者本人が行います。
  • マルチ高年齢被保険者となることを希望する労働者が、事業所へ申請書の記入及び必要書類の交付の依頼を行った場合、事業主は速やかに申請書の事業主記載事項に記入を行い、必要書類を申出者へ交付します。拒否をしたり、当該の労働者に対して不当な扱いをすることがあってはいけません。
  • マルチ高年齢被保険者が資格取得をした日から雇用保険料の納付義務が発生します。

この法改正によって、1つの勤務先では労働時間が短く雇用保険に加入することができなかった高齢労働者が複数の事業所で働くことにより要件を満たした場合に雇用保険に加入することができるようになりました。日本の高齢化社会において国の経済を支える大きな力を65歳以上の高齢の方も担っているという事実に対してこのように生活を保障する制度が出来たことは国にとっても重要なことなのです。

また、今回の法改正は「試行的」に対象者を高齢者に絞って行われた特例となりますが、これをきっかけとして、副業・兼業を認める会社が少ない現代で副業・兼業がより促進され複数の事業所で働く労働者に関する新しい社会保障制度が作られることが期待されます。

「マルチジョブホルダー制度」の詳細については「ブログ:マルチジョブホルダー制度(65歳以上)」をご参照下さい。

健康保険法:傷病手当金の支給期間の通算化

概要

業務外のケガや病気で働くことができない間の休業に対して生活保障を目的として支払われる傷病手当金の支給期間について、最長1年6ヵ月とされていたものが、令和4年1月1日より通算で1年6カ月へ変更となりました。これにより治療と仕事の両立がしやすくなりました。

この法改正のポイント!

  • 傷病手当金の受給開始後、治療が落ち着き復職したが、再度、治療や療養が必要となり欠勤する場合にも、最初の支給開始日から通算1年6カ月まで再受給が可能となりました。
  • 令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金が通算化の対象となります。
  • 傷病手当金は、業務外の私傷病による最初の3日間連続の休業(待期期間)後、4日目以降の休業から支給の対象となります。
  • 休業中のお給料や出産手当金、失業給付金等との同時受給は出来ませんのでご注意下さい。

近年の医療の進歩によって私病の治療を続けながら仕事を続けることが出来るようになった一方で、仕事をすることが出来なくなってしまった場合にも国による傷病手当金等の生活保障によって、仕事を辞めることなく治療に専念することが出来るようになりました。労働者の傷病の程度や治療状況に応じて会社側も臨機応変に対応し、会社の基盤となる従業員の離職防止に繋げていきましょう。

傷病手当金の詳しい説明や受給要件、支給期間等については「お役立ち情報:傷病手当金」を、支給期間の通算化に関する法改正の詳細については「ブログ:【令和4年1月1日】傷病手当金の支給期間における法改正」をご参照下さい。

健康保険法:任意継続被保険者制度の見直し

概要

退職後最大2年間、加入していた健康保険の被保険者であり続けることのできる制度「任意継続被保険者」の資格喪失理由に、「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出た場合」というものが追加された法改正となります。今までは会社退職後に任意継続被保険者を選択した場合、再就職または年齢到達などの喪失要件に該当する場合以外は、2年間は任意継続被保険者として継続する必要がありましたが、今回から「希望」により喪失が可能となりました。

この法改正のポイント!

  • 今までの任意継続被保険者の資格喪失は、①2年間の期間を満了した場合、②保険料が納付期限までに納付されなかった場合、③適用事業所の被保険者となった場合、④満75歳または後期高齢者医療制度の被保険者となった場合、⑤被保険者自身が亡くなった場合のみとされていましたが、ここに「本人の希望」が追加されました。

この法改正によって、退職後の公的医療保険に関して本人の意思による決定が出来るようになり、協会けんぽから保険料の安い国民健康保険に切り替えたり、健康保険被保険者の被扶養者になることが可能となりました。

生活保障のイメージ

令和4年4月施行の法改正

今年4月に施行となった法改正は、育児・介護休業法及び女性活躍推進法、ハラスメント規制法、年金改革法に関する4つの法改正となります。

育児・介護休業法:雇用環境整備や周知・意向確認等

概要

「育児・介護休業法」は、共働きの両親がそれぞれ育児に専念することができる環境の整備を行うなかで、特に男性の育児休業取得促進を目的とし令和3年6月9日に公布されました。育児・介護休業法の法改正の5つの項目のうち、①育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和、が令和4年4月に施行となります。

この法改正のポイント!

  • 育児休業を取りやすい雇用環境の整備が義務付けられました。
  • (本人または配偶者の)妊娠・出産を申し出た従業員へ個別面談による制度説明を行ったり、書面による制度の情報提供を行うなどして周知をすること、そして育児休業を取得する意向の確認が義務付けられました。
  • 漏れのないようにあらかじめ周知文書や意向確認方法を決めておきましょう
  • 有期雇用労働者の育児休業および介護休業の取得条件(対象となる労働者)のうち、「同一の事業主に1年以上雇用されていること」という条件が廃止されます。

共働き世帯が増加傾向にある現代、また少子化対策にも目を向けていかなくてはいけない今、両親共に育児休業のとれる環境はとても重要であるといえます。育児・介護休業法における「男性の育児休業取得促進」のための法改正のうち2項目が令和4年4月に施行され、さらに2項目が令和4年10月に施行されます。

育児・介護休業法における「男性の育児休業取得促進」のための法改正の詳細については「ブログ:【令和4年4月から施行】育児・介護休業法改正」をご参照下さい。

女性活躍推進法

概要

平成27年8月28日に成立した「女性活躍推進法」(正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)は、働く女性の活躍の場を増やし職業生活の中での男女格差をなくすための法律として、平成28年度~平成37年(令和7年度)までの10年間の時限立法として施行されました。女性が働くことを自らの意思で選び、個性や能力が十分に発揮されることが豊かで活力のある社会の発展において重要であるとされ、職業生活において活躍したいと願う女性の活躍推進に向けた行動計画や数値目標の設定や公表が、国や地方公共団体・民間企業等を対象に義務付けられました。

この法改正のポイント!

  • 女性の職業生活における活躍を推進するための一般事業主行動計画の策定・女性活躍に関する情報公表義務化を常時労働者301人以上の大企業から常時労働者101人以上の規模の中小企業も含むかたちで拡大されました。
  • 女性の職業生活における活躍を推進するための一般事業主行動計画の策定において優れた取り組みを行っている一般企業をある要件によって認定する「えるぼし認定制度」及び「プラチナえるぼし認定制度」を実施しています。これによって、認定された一般企業は、優秀な人材の確保や企業のイメージアップにつながるだけでなく、公共調達や⽇本政策⾦融公庫による融資制度の優遇措置などが受けられます。

日本社会において働く女性の現状として、出産を機に退職しなくてはならない、出産、育児後の再雇用時には正社員ではなく、非正規としての雇用となってしまう、女性の管理職の割合が低い、また出世できる可能性が低いなど、多くの課題があります。しかし逆にいうと女性の雇用環境を整備することによって、今までよりもさらに強力な労働力を確保することが出来るようになります。そのためには、労働環境整備・職場風土の改善など即時に解決できない課題も多いため、出来ることから少しずつ日々改善していくことが必要になります。

「女性活躍推進法」の詳細については「ブログ:【令和4年4月施行】女性活躍推進法」をご参照下さい。

ハラスメント規制法(パワハラ防止措置)

概要

中小企業に対してパワハラ防止措置を義務化する法改正となります(大企業はすでに施行されています)。パワハラが起こりにくい職場環境を作っていくための取り組みとして、①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発、②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③事実関係の迅速で正確な確認かつ配慮のための適切な対応、④相談者のプライバシー保護等そのほか併せて講ずべき措置、の4つが定められています。

この法改正のポイント!

  • パワハラに対する会社の方針を明確にし、トップから従業員へのメッセージ発信と就業規則等のパワハラ関連規定の整備を行いましょう。
  • 相談窓口や対策委員会等の設置を行い、従業員へ周知を行いましょう。
  • パワハラを当事者だけの問題と思わず、会社全体の問題として注視し、パワハラ問題を未然に防ぐ対策を行っていきましょう。
  • 厚生労働省のハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」に「パワーハラスメント対策導入マニュアル」や社内アンケートの例、管理職や社員向け研修資料、社内掲示用ポスターなど役立つ資料がありますので活用しましょう。

「パワハラが発生しやすい職場」の傾向として、上司と部下のコミュニケーションが少ない、残業が多い、休みがとりにくい、失敗が許されない、失敗の許容度が低い、という職場環境があげられます。ご自身の会社の様子を思い浮かべて頂き1つでも当てはまる場合には、今すぐ職場環境の見直しや、従業員の働き方改革が必要です。ハラスメントトラブルが発生すると、被害者や加害者の当事者だけでなく、周囲の人々も巻き込み会社全体としては仕事へのモチベーション低下に繋がってしまう恐れがあります。またハラスメントトラブルによって事が大きくなり裁判沙汰になってしまえば、企業全体ののイメージダウンにつながる可能性もありますので、早めに対策を行っていきましょう。

「パワハラ防止措置の義務化」の詳細については「ブログ:【令和4年4月施行】パワハラ防止措置」をご参照下さい。

年金改革法:60~64歳の在職老齢年金

概要

労働者が60歳になってから働きながら老齢年金を受け取ることができる在職老齢年金という制度において、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部またはその全てが支給停止されることがあります。これを「在職老齢年金の支給停止制度」といいます。この支給停止条件となる、60歳以上65歳未満の在職老齢年金の支給停止基準額が月額28万円から月額47万円に引き上げられました。

この法改正のポイント!

  • 働きながら年金を受給している場合、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部またはその全てが支給停止される場合があります。
  • 支給停止基準額の月額47万円とは基本月額と総報酬月額相当額の合計金額をさします。
  • 老齢基礎年金(国民年金)は支給調整はかかりませんので注意しましょう。

年金制度は特に老齢年金の場合、老後の生活を安定させるうえでとても大切な制度です。特に少子高齢化によって、今後さらに高齢者がバリバリ働くのは必須になってくるでしょう。高齢者になれば、会社からもらえる給料だけでなく、その時点で受給できる年金とのバランスによって雇用形態を考える必要があります。そのため、多くの人が年金制度を理解することによって、それぞれ自分自身の年金の見直しができるだけでなく、事業主の皆様としては60歳以降の従業員の雇用形態を見直すきっかけにしてほしいと考えています。

「在職老齢年金」についての詳細は、「お役立ち情報:在職老齢年金」をご参照下さい。

年金改革法のイメージ

令和4年10月施行の法改正

令和4年10月に施行となる法改正は、育児・介護休業法のうちの2項目及び健康保険法に関する改正年金改革法に関する改正の3つとなります。

育児・介護休業法:産後パパ育休や育休分割取得等

概要

10月の法改正は2つの項目があります。1つ目は通常の育児休業とは別に子供の出生後8週間以内に4週間まで取得出来る「出生時育児休業」の創設です。女性の場合は産後休業に入っているときなので、基本的には男性が取得するものとされ「産後パパ育休」とも呼ばれています。2つ目は今まで原則1回だった育児休業を分割して2回まで取得することができるようになります。男性の場合、出生後8週間以内の「産後パパ育休」と合わせると、男性は合計4回まで分割することが出来るようになります。子供が1歳になった後の育児休業の延長についても、延長後の育児休業の開始日が柔軟化されます。

この法改正のポイント!

  • 「産後パパ育休」を取得する際は、①休業開始日の2週間前までの申請が必要、②計4週間の休業を2回に分割して取得することが可能、③労使協定を締結している場合、労働者が合意した範囲で休業中の就業が可能、となります。
  • 両親共働きの場合、夫婦交代で育児休業を取得し、協力しながら育児に専念することが出来るようになります。
  • 育児休業の管理が煩雑になる可能性があります。本来は取得出来るのに上司や人事担当者が改正点を理解しておらず拒否してしまうなど誤った取り扱いをしないように注意しましょう。

育児はもはや女性だけのことではなく男性も一緒に行うことが普通である世の中になってきました。そういった世の中のご夫婦の意識改革に応じた会社側の対応の変化、国の生活保障としての法改正はとても重要であるといえます。共働き夫婦が協力して育児に専念し、家族としてより繋がりの深い環境をつくることができるようになるでしょう。会社としても労働者の離職防止につながり、経験値や信頼性の高い労働力を確保することができるようになります。

育児・介護休業法における「男性の育児休業取得促進」の詳細については「ブログ:【令和4年4月から施行】育児・介護休業法改正」をご参照下さい。

健康保険法:短期育休の社会保険料免除要件の変更

概要

今までの社会保険料の仕組みでは月末時点で育児休業を取得している場合、どんなに短期間でも社会保険料が免除されていました。月末に1日だけの育休取得による社会保険料免除を受ける行為を防ぐために、法改正が行われます。

この法改正のポイント!

  • 2週間以上の育児休業取得であれば、月末を含まない月内の取得の場合でも、社会保険料免除の対象となります。
  • 賞与に対する社会保険料免除を受けるには、1カ月を超える育児休業の取得が必要となります。
  • 短期間の育児休業を細かく取得するケースが増えるかもしれません。保険料免除のルールを理解しておきましょう。

今回の法改正により、育児休業の取得に関してさらに複雑になりました。育児休業対象となる従業員がいる会社では人事労務担当者の負担も大きくなりますが、制度をしっかりと理解し、運用していくことで、育休の取りやすい環境整備につながり、雇用の安定にも繋がるはずです。

社会保険適用拡大

概要

パート・アルバイトなどの短時間労働者で社会保険の被保険者となるための条件は、原則所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であることとされていますが、令和4年10月から段階的に特定適用事業所の事業規模要件の変更に伴い、パート・アルバイトなどの短時間労働者の社会保険の加入条件が拡大されます。

この法改正のポイント!

  • 令和4年10月以降、被保険者数101人以上の企業で働くパート・アルバイトなどの短時間労働者は、所定労働時間がフルタイム労働者の4分の3未満でも、加入対象となる可能性があります。
    ※厚生年金保険の被保険者数は、フルタイムの従業員数と週労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数(パート・アルバイトなどの短時間労働者を含む)を加算した人数となります。
  • 対象企業で働くパート・アルバイトなどの短時間労働者は、①週の所定労働時間が20時間以上である、②2か月を超える雇用期間が見込まれる、③賃金の月額が8.8万円以上、④学生ではない、場合に社会保険の新たな加入者となります。
  • 社会保険料の負担が増えることになります。対象者を洗い出して試算しておきましょう。

令和4年10月から段階的に施行される法改正に伴って、ご自身の会社の事業規模に応じた社会保険の加入義務が生じる従業員の増加が予想されます。ご自身の会社で働く従業員の社会保険加入対象者を今一度ご確認いただき、新たに加入対象となるパート・アルバイトなどの短時間労働者へきちんと改正内容や社会保険制度に関して周知しましょう。

年金改革法における「社会保険適用拡大」の詳細については「ブログ:社会保険適用拡大」をご参照下さい。

年金改革法のイメージ

最後に

毎年4月は年度初めということもあり、法改正が盛りだくさんです。4月よりも前から法改正に対応するための準備を始められている会社も、これから準備をするという会社も時代に乗り遅れないように、今年の法改正をチェックしましょう。

「該当している・しそうな従業員がいる」「うちの会社もやっといた方がよさそう」など思い当たる点がある方は、ぜひ詳細をチェックし、より働きやすい労働環境・会社を作っていきましょう。

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