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コラム

定期健診の気になる4つの疑問にお答えします!

協会けんぽ都道府県支部から送付される「健康診断のご案内」は届いていますでしょうか?例年3月下旬頃になると、緑色の封筒で「健康診断のご案内」が届きます。事業主が労働者を雇用する際は、労働安全衛生法に基づき、医師による年1回の定期健診を実施することが義務付けられています。協会けんぽからの健診費用の補助を利用して、事業主の義務である定期健診を実施しましょう。今回は、この定期健診について気になる4つの疑問にお答えしました。

定期健診と生活習慣病予防健診の違いは?

2つの健診は似ているようで、大きな違いがあります。3つのポイントに分けてそれぞれ見ていきましょう。

2つの健診の概略の違い

定期健診

労働安全衛生法で定められた1年以内に1回実施する義務のある定期的な健康診断で、事業主は「常時使用する労働者」に対して実施する義務があります。

生活習慣病予防健診

対象年齢を35歳以上に限定した健康診断で、協会けんぽが健診費用を補助してくれる定期的な健康診断です。事業主に対する実施義務はありません。

2つの健診の検査実施項目の違い

生活習慣病予防健診の方が定期健診よりも検査実施項目が充実しています。定期健診は事業主の義務として実施する健診のため、労働者の健康状態を確認する最低限の検査項目となります。それに比べて生活習慣病予防検診には、定期健診に含まれないがん検診などもを同時に受診できます。生活習慣病予防健診の対象者となる労働者は、生活習慣病予防健診を定期健診として利用することも可能です。
※生活習慣病予防検診と定期健診の検査項目の比較がされたわかりやすい表が掲載されています。ぜひ「協会けんぽ 山梨支部」のページをご参照下さい。

2つの健診の受診対象者の違い

定期健診の対象者は常時使用する労働者(年齢による限定はなし)となります。常時使用する労働者とは、無期雇用労働者、契約更新による1年以上の雇用見込みのある者、週の所定労働時間が通常の労働者(正社員等)の3/4以上である労働者(パートタイム労働者)をいいます。これらに該当する労働者に対しては、受診を推奨するための実施義務があります。それ以外に、週の所定労働時間が通常の労働者(正社員等)の1/2以上である者に対しても実施することが望ましいとされています。

生活習慣病予防検診の対象者は健康保険の被保険者(任意継続被保険者も含む)である労働者のうち、35歳~74歳の労働者となります。

※定期健診に関する詳細は別ページ「お役立ち情報:定期健康診断」をご参照ください。

定期健診

定期健診費用は誰が負担する?

定期健診は、事業主に実施する義務があるため法定健診とよばれています。実施義務があるため、行政通達からも「会社が費用を負担すべき」とされています。しかし、原則的には「会社が費用を負担すべき」とされていますが、労働者が会社で指定する医療機関での受診を拒否したり、労働者自身で選択した医療機関で受診し、検査結果の証明を会社に提出した場合には、会社はその費用を負担する必要はありません。

ここがポイント!
生活習慣病予防健診の対象者となる労働者には、協会けんぽからの費用補助を利用して、定期健診を実施した方が会社にとっては費用面でお得です。残念ながら、常時使用する35歳未満の労働者は協会けんぽからの費用補助の対象とはなりませんが、定期健診を受けさせる義務はありますのでご注意ください。

以前は、協会けんぽと医療機関の両者に定期健診の申込みが必要であったため手間がかかっていましたが、令和2年以降、協会けんぽへの申込は不要となり医療機関への申込みだけで、費用補助を利用することが出来るようになりました。

会社は定期健診後、何をすればいいの?

定期健診後の流れは、以下のフローチャートのようになります。

定期健診実施後のながれ

定期健診の実施以降、上記のフローチャートに記載されている項目ごとに必要な取り組み事項があります。

  1. 定期健診の実施および結果の記・保存
    定期健診実施の際は、安衛法第66条の3で定められているように健康診断個人票に各個人の結果を記し、企業での実施の場合は5年間保存する必要があります。
  2. 健診結果に基づく保健指導
    安衛法第66条の7で定められているように、定期健診の結果に基づき、特に健康の保持に努める必要があると認定される労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を行うよう努力義務があります。
  3. 労働者への結果通知
    安衛法第66条の6で定められているように、定期健診の結果は当該労働者へ必ず結果通知をする必要があります。
  4. 健診結果について医師等からの意見聴取
    健診結果に基づく医師等の意見聴取の上、産業医による就労判定を行い、「就業制限」また「要休業」など、当該労働者の健康を保持するために措置が必要な場合には、労働条件の変更(就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等)等の措置を講じる必要があります。産業医がいない事業所の場合は産業保健総合支援センター地域窓口(地域産業保健センター)を活用することができます。
  5. 所轄の労働基準監督署への報告
    定期健診については常時50人以上の労働者を使用する事業所に対して、所轄の労働基準監督署への健康診断の結果の報告が必要となります。

労働者が健康診断を拒否した場合にはどうなる?

事業主側に法定健診である定期健診を労働者に受けさせる義務があると同時に、労働者側にも定期健診を受ける義務があります。しかし、受けさせる義務を遂行しない事業主に対しての法的罰則はあっても、受ける義務を遂行しない労働者に対する法的罰則はありません。労働者が健診を受けないまま健康問題を抱え、大きな病気に発展した場合には、事業主に安全配慮義務違反が問われる可能性すら存在します。では事業主の皆さんはどうすればいいのでしょうか。

まずは、なぜ受診を拒んでいるのか聞いてみましょう。もし会社が指定した医療機関が拒否の原因ならば、労働者自身で選択した医療機関で健診受診後に、結果を事業主に提出することが可能であることを説明し受診を促しましょう。もし費用面での負担が拒否の原因ならば、健診費用については会社が負担する旨を説明し受診を促しましょう。

但し、それぞれ労働者にも考えや思いがありますので、否定せずにまずは意見を確認することが必要です。それでも受診拒否されてしまう場合には、事業主は労働者に対して健康診断の受診命令を出すことが出来るとされています。会社側が受診命令や指導しているにもかかわらず、労働者が受診拒否する場合には、就業規則等の定めに従って懲戒処分を下すことも可能となります。指導命令を行ったにも関わらず、受診拒否している旨を証拠として残しておくことで、懲戒処分を行った場合でも、少なくとも「安全配慮義務違反」に対抗できる可能性があります。

最後に

定期健診の目的は、従業員の健康状態の確認だけでなく、会社にとっても大切な戦力である従業員が問題なく就業可能かどうかの確認を行うことにあります。定期健診の実施は事業主の義務です。しかし、義務だから実施するのではなく会社経営にあたり、従業員は欠かせない存在であることを再認識して頂き、これからの事業の拡大、また労働者が最大限の能力を発揮出来る働きやすい環境づくりのために、定期健診を実施し、積極的な健診の受診を促していきましょう。定期健診等、人事労務管理に関して不安なことやわからないことがございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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