【2022年12月最新版】新型コロナウィルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置
弊社のコラムでは2021年7月から数回にわたって、この新型コロナウィルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置に関してご紹介をしてきました。まだ、日本国内でも感染者数の増加が見られますが、日々のニュースではコロナに関連した話題は比較的少なくなってきており、コロナと共にどのように生活をしていくか、という「ウィズコロナ時代」が到来していることを実感しています。そのような状況の中で、政府も雇用維持対策は転換期に入っているとの判断から、新型コロナウィルス感染症が流行し始めた2020年から行っている特例措置を終了する方向であることを発表しました。また特例設置による助成金の支給決定額は2022年12月時点で約6.2兆円を超え、雇用保険の財源も圧迫されているのが実情です。
2022年11月30日付の変更点
緊急対応期間として延長・更新を続けてきた「新型コロナウィルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置」は2022年11月30日で終了し、雇用調整助成金の通常制度となります。しかし、2022年12月1日以降は特に業況が厳しい事業主を対象に、経過措置期間として2023年3月31日までその対応が延長されました。
雇用調整助成金の適用条件
2022年12月以降の経過措置期間としての「新型コロナウィルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置」は、2022年11月までにコロナ特例を活用したかどうか、雇用調整助成金を受給していたかどうかで、適用となる内容が異なります。まずは、ご自身の会社がどのような適用となるのか、雇用調整助成金等の活用についてのフローチャーㇳをご確認下さい。
変更点
こちらの表を基に、2022年12月以降の変更点を確認していきましょう。
判定基礎期間 | 2022年10月・11月 | 2022年12月~2023年1月 | 2023年2月・3月 | |||||||||||||
中小企業 | 原則(※1) |
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業況特例・地域特例 |
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特に業況が厳しい事業主(経過措置)(※2) | - |
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大企業 | 原則(※1) |
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業況特例・地域特例 |
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特に業況が厳しい事業主(経過措置)(※2) | - |
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※1) 生産指標が前年同期比(2023年3月までは2019~2022年までのいずれかの年の同期又は
過去1年のうち任意月との比較でも可)で1か月10%以上減少している事業主が対象となります。
なお、2022年12月以降に対象期間が1年を超える事業主については業況を再確認する必要があります。
※2) 生産指標が直近3カ月の平均で前年、前々年又は3年前の同期比で30%以上減少している事業主が対象となります。なお、業況は毎月確認をする必要があります。
助成率の引き下げ
中小企業、大企業ともに、2022年11月までの助成率と比較すると2022年12月以降は減少しています。
地域特例の廃止と業況特例の対象事業主の変更
緊急事態宣言などの発令がなくなったことで地域特例は廃止されました。また、今までの業況特例が廃止となり、名称を変更したかたち(特に業況が厳しい事業主(※2))で、経過措置として、判定基礎期間の初日が2022年12月~2023年1月までの2ヶ月間のみ2/3(9/10)9,000円の助成が受けられます。
対象期間の延長
休業した対象期間の初日が2020年1月24日から2022年3月31日までの間にある場合は、雇用調整助成金の対象期間が1年を超えている場合でも、2023年3月31日まで延長することができます。
支給限度日数の上限
2022年12月1日以降の休業等については、対象期間(2023年3月31日まで)のうち100日まで受給できます。緊急対応期間(2022年11月30日まで)に実施した休業は、この支給限度日数には含まれません。
また、判定基礎期間が2022年12月1日を含む場合は、 この判定基礎期間が終了した日以降、100日まで受給することができます。例えば、11月25日から始まり12月24日に判定基礎期間が終了した場合、12月25日以降の休業等から100日をカウントします。
※ 支給日数の計算方法については、厚生労働省発行の資料をご参照ください。
実務上での注意点
「特に業況が厳しい事業主」について
「特に業況が厳しい事業主」とは、今までの業況特例と同様に、売上高等の生産指標が最近3カ月平均で前年、前々年または3年前同期に比べ30%以上減少している事業主に対して適用される雇用調整助成金の経過措置です。判定基礎期間(申請)ごとに業況を確認されるようになりました。該当する月全てで提出が必要となります。
生産指標の再確認について
今回の経過措置は、生産指標が前年同期比で1か月10%以上減少している事業主が対象となります。そのうち、2022年12月以降に対象期間が1年を超える事業主(以下図①、②の場合)については業況を再確認する必要があります。
厚生労働省発行の資料より抜粋
※生産指標を比較する際は以下のAとB、2つの生産指標を比較することによって、それが10%以上であることが要件となります。(厚生労働省発行の資料より抜粋)
- 判定基礎期間(複数の判定基礎期間がある場合はその中でいずれか一つ)の初日が属する月の生産指標またはその前月の生産指標またはその前々月の生産指標が比較対象となります。
例)判定基礎期間の初日が2022年11月1日である場合は、2022年9月~11月のいずれかの月の生産指標を比較対象として用いる。 - 前年同月の生産指標(①)または前々年同月の生産指標(②)または3年前同月の生産指標(③)または前年同月から前月までのいずれかの1か月の生産指標(④)が比較対象となります。
例)1.で2022年11月の生産指標を比較対象として選んだ場合、2021年11月、もしくは2020年11月、もしくは2019年11月、もしくは2021年11月~2022年10月のうちのいずれか1か月を比較対象として用いる。
厚生労働省発行の同資料では、上記のAとBの場合を具体例で説明がされています。以下、抜粋でご紹介します。
Aの選び方が下記の場合を想定します。
- 休業等実施期間:10月1日~11月30日
- 判定基礎期間(賃金締切期間):毎月1日~末日(賃金締切日末日)
- 2つの判定基礎期間【ア】、【イ】がある場合
今回申請する判定基礎期間の初日ア~イの中から1つ選ぶ場合、
- アを選ぶ場合: A は8月~10月のいずれかの月の生産指標
- イを選ぶ場合: A は9月~11月のいずれかの月の生産指標
となります。
Aで11月の生産指標を選んだ場合のBの選び方の具体例
Bは上記の図の、ハ、ロ、イ、ニから選ぶことになります。
このA、Bを比較して10%以上減少している場合は要件を満たすということになります。
最後に
弊社での雇用調整助成金の申請代行件数も、以前のブログを公開したときからさらに減少傾向にあります。しかし、多くの会社がコロナ以前の状況にまで戻っているというわけではなく、現在でも助成金等の支援を受けて経営を続けている企業さんも少なくありません。さらには物価高騰のインフレの波に煽られ、会社経営も予断を許さないという状況にあることを実感している企業さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような状況の中で、雇用保険財政も悲鳴を上げており、雇用維持を目的とした雇用調整助成金にばかり頼っていることもできないかと思います。事業主の皆様には、引き続き、可能な限り雇用調整助成金の経過措置を活用して頂きながら、だんだんと違った方法を利用した雇用維持や経営の立て直しも必要な時期ではないでしょうか。
弊社では、事業主の皆様が今できることを、助成金や社会保険関連、労務人事管理などの側面から共に考え、経営に関するご相談やアドバイスをさせて頂いております。お困りなことがございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。