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法改正

【令和4年4月施行】パワハラ防止措置

パワーハラスメントやセクシャルハラスメントといった言葉は今では誰もが知る言葉となり日本では大きな社会問題として取り上げられることも多くなってきました。特に職場でのハラスメントトラブルは近年でも増加傾向にあり、いじめやいがらせの相談件数についても年々増加傾向にあります。また、ハラスメントトラブルが原因で発症する精神障害に対しての労災支給決定も増加傾向にあります。2016年の厚生労働省が実施した実態調査では、過去3年以内にパワハラを受けた人は約3割以上、各都道府県労働局に寄せられたいじめや嫌がらせの相談件数は2018年度で8万件を超える数字となっています。このような実態に対して、労働施策総合推進法、通称パワハラ防止法が2019年5月に成立し、会社がパワハラを防止するための措置を講じることが義務付けられました。この法律は大企業への施行が2020年6月に実施され、中小企業へもいよいよ2022年4月に施行されます。今回の記事ではパワハラ防止措置に関してご紹介します。

パワーハラスメントとは

パワーハラスメント(以降、パワハラと記載)という言葉を知っていても実際にはどういったものをパワハラというのかわからない、という人も少なくないのではないでしょうか。パワハラの定義について労働施策総合推進法の観点からみていきましょう。

定義

労働施策総合推進法第30条の2「雇用管理上の措置等」には以下のように記載があります。

  1. 事業主は、職場において⾏われる優越的な関係を背景とした⾔動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
  2. 事業主は、労働者が前項の相談を⾏ったこと⼜は事業主による当該相談への対応に協⼒した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

この記載から以下の3つの要素をすべて満たす場合、それはパワハラであるといえます。

  1. 優越的な関係を背景とした⾔動であって、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

では実際に、上記の3つの要素それぞれに対して、具体的にどのような行為がパワハラとされるのか次項で見ていきましょう。

過度に叱責される女性社員

パワハラにあたる行為

パワハラにあたる行為には、大きく分けると以下の6つの類型があります。

  1. 身体的な攻撃ー暴行・障害など
  2. 精神的な攻撃ー脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言など
  3. 人間関係からの切り離しー隔離・仲間外れ・無視など
  4. 過大な要求ー業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制や仕事の妨害
  5. 過小な要求ー業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事自体を与えないこと
  6. 個の損害ー私的なことに過度に立ち入ること

この6つのパワハラにあたる行為については、実際に起こったことに対してパワハラであるという判断がしい場合も、もちろんあります。より具体的な、パワハラにあたる行為の例、あたらない行為の例については、厚生労働省発行のパワーハラスメント防止パンフレットをご参照下さい。

パワハラが発生しやすい職場とは

企業調査・従業員調査によって明らかにされた「パワハラが発生しやすい職場」の傾向として、以下のものが挙げられます。

○企業調査、従業員調査共に見られた傾向トップ3

  1. 上司と部下のコミュニケーションが少ない
  2. 残業が多い、休みがとりにくい
  3. 失敗が許されない、失敗の許容度が低い

この結果をご覧いただいて、ご自身の会社の様子を思い浮かべて頂くとどうでしょうか。1つでも当てはまる場合には、今すぐ職場環境の見直しや、従業員の働き方改革が必要です。

パワハラが一度起こると解決をするのに時間も労力もかかります。また当事者やその周囲の従業員にも悪い影響を与え、仕事に対するモチベーションの低下や社内の雰囲気の悪化による業務の生産性の低下など悪循環に陥ってしまいます。パワハラを個人同士、従業員の間のことと思わずに、会社としてパワハラが起こりやすい環境にしないためには会社としても取り組みが必要です。

人と人の関係をイメージする図

パワハラ防止措置~会社は何を取り組めばいいのか~

それでは会社として具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか。2022年4月に中小企業に対して施行されるパワハラ防止措置の義務化についてみていきましょう。パワハラが起こりにくい職場環境を作っていくために必要な、会社としての取り組みは4つの項目に分けられます。

  1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
    1. 会社としての方針を明確化するためのトップによる全従業員へのメッセージ
    2. 就業規則等によるパワハラ行為を行った者に対する厳正な懲戒規定等の処分の方針を明確にするルール付け
    3. 職場の実態を把握するための従業員アンケート調査の実施
    4. 管理監督者向け及び一般従業員向けの教育・研修の実施
    5. 組織の方針やルール、相談窓口等の情報周知や啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    1. 相談窓口の設置
    2. 対策委員会等の設置
    3. 相談者へのフォローアップ、周知、教育などの再発防止のための取組の実施
  3. 事実関係の迅速で正確な確認かつ配慮のための適切な対応
    • 誤解であると判断した場合・・・相談者及び相手への説明と再発防止措置の実施
    • 事実関係があると判断した場合・・・パワハラ対策委員会による協議、事情聴取と処分の決定、解決した後の再発防止措置の実施
  4. そのほか併せて講ずべき措置
    1. 相談者及びその相手等のプライバシー保護
    2. 相談をしたことによる相談者への解雇等の不利益な取扱いを禁止すること

法律で定められたパワハラ防止措置を項目として挙げてみても、これだけ多くのことを会社として実施することが出来ます。このように会社として出来ることをご理解いただいた今、パワハラは個人間、従業員同士のことではなく、会社としても取り組んでいくべきことであるとご理解いただけるかと思います。パワハラ防止措置のさらに詳しい情報については、厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル」をご参考にして下さい。

最後に

ハラスメントトラブルが発生すると、被害者や加害者の当事者だけでなく、周囲の人々も巻き込み会社全体としては仕事へのモチベーション低下に繋がってしまう恐れがあります。またハラスメントトラブルによって事が大きくなり裁判沙汰になってしまえば、企業全体ののイメージダウンにつながる可能性もあります。このことから、ハラスメントトラブルは必ずしも当事者だけの問題ではなく、会社としての職場環境の整備や従業員への働きかけがとても重要となります。

まずはパワハラ防止法などの法律に従って、雇用管理上の必要な措置を講じ、ハラスメントトラブルを未然に防ぐ対策を行っていきましょう。それによって、従業員1人ひとりのモチベーションを維持し会社全体の生産性向上へとつなげていきましょう。

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