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コラム

月60時間超の時間外労働のよくある質問にお答えします!

いよいよ2023年4月から、働き方改革関連法案において月60時間超の時間外労働(残業)に対する割増賃金率が25%から50%へ引き上げられ、中小企業への適用も開始されます。中小企業の事業主の皆さまには、法改正に適応してどのように実務に反映させていくべきか今一度、ご理解を頂きたいと思います。適用が開始となった今、今後必要となる実務対応に関して様々な質問をいただいています。今回の記事では、頂いている質問のうち多くの方が疑問をもたれる4つの質問をまとめてみました。

質問1.施行日をまたぐ場合の時間外労働の数え方と給与計算方法は?

施行日、つまり中小企業に適用される2023年4月1日をまたぐ給与計算期間となる場合、どの期間の時間外労働をカウントすればよいのか、また割増賃金率の計算はどのようにすればよいのかについて解説をしていきましょう。

回答

時間外労働時間60時間超であるかは、施行日である2023年4月1日からの時間外労働時間数をカウントして判断します。例えば、給与計算期間が21日から翌月20日だった場合、3月21日~4月20日の給与計算期間については、施行日を挟み、3月21日~3月31日までと4月1日~4月20日までの2つの期間に分けて考えます。3月21日~3月31日の期間で時間外労働が60時間を超えたとしても、法改正前の25%の割増率で計算しますが、4月1日~4月20日の期間で時間外労働が60時間を超えた場合には、割増率50%で時間外手当を算出します。

ここに注意!
月60時間の時間外労働には「休日労働」時間数は含まれません。休日とは労基法上では「法定休日」のことを指しており、法定休日とは「毎週少なくとも1回の休日」を指します。法律では法定休日を特定する(例:毎週日曜日を法定休日とする)ことを要求していませんが、就業規則等で特定することで、時間外労働時間数についてのカウントがしやすくなります。

質問2.36協定の記載方法に変更はある?

時間外労働や休日労働を行わせる場合に、事業主と労働者間で締結される「36協定」についてはどうでしょうか。適用が開始されたことによって内容を変更する必要はあるのでしょうか。

回答

割増賃金率については、36協定の記載項目としてはありません。そのため、特段、記載事項についての変更はありません。

ここに注意!
月60時間超の時間外労働は、原則的には認められません。労基法による時間外労働の原則的な上限は、月45時間と年360時間となります。例外として特別条項を締結することにより、単月100時間未満、複数月平均80時間未満、年720時間まで時間外労働が可能となります。
つまり、36協定に特別条項を追加して締結し届出することで、月60時間を超えて時間外労働が可能となります。

質問3.就業規則の変更は必要?

回答

一般的に労務関連の法改正があった際には、就業規則の変更は行うべきと考えています。変更をしていない就業規則は法改正に応じた内容が記載されていないため、変更前の部分については「無効」とみなされます。「法律に則っていれば就業規則は変更しなくても問題ない」と考えている事業主もいらっしゃいますが、古いままの就業規則では労使間でのルールがきちんと定まっていないのも同然です。そのため、そういった部分から労使トラブルに発展しやすく、更には、いざ労使トラブルが起こった際にルールが明確でなく場当たり的な対処となり、正しく対処できない場合も多くあります。法改正をきっかけに、就業規則を見直し、変更する必要がないか再度確認をすることをおすすめ致します。

質問4.代替休暇の取得時間に端数が生じた場合はどうする?

月60時間超の時間外労働の場合、割増率50%以上の賃金を支払う替わりに、労働者の健康の維持と休息時間の確保を目的として、法定割増賃金率の引き上げ分を賃金を代替休暇(有給休暇)として付与することができます。この代替休暇の取得時間に関して、端数が生じた場合にはどのようにしたらよいのでしょうか。

回答

まず1つ目の例をご紹介します。所定労働時間が1日8時間の事業所で時間外労働時間数が76時間だった場合、(76時間ー60時間)× 0.25=4時間、つまり所定労働時間の半分の時間となります。代替休暇は労働者の休息の機会を確保することが目的となるため、1日や半日など、まとまった単位で付与することが必要となります。上記の例でいくと、半日の代替休暇が取得可能ということになります。

※代替休暇の算出方法については別ページ「お役立ち情報:割増賃金」をご参照ください。

次に2つ目の例をご紹介します。所定労働時間が1日8時間の事業所で時間外労働時間数が80時間だった場合、(80時間ー60時間) × 0.25=5時間、となり半日休暇(4時間休暇)では取得すべき休暇をすべて取得したことになりません。1つ目の例で代替休暇は1日や半日などまとまった単位で付与することが必要、と説明しましたが、代替休暇の時間数を切下げることは出来ません。

この場合には、以下の3つの方法で付与することができます。

  1. 時間単位の年次有給休暇制度を適用としている企業では代替休暇(5時間)と時間単位の年次有給休暇(3時間)を合わせて、1日の休暇とすることが可能です。有給休暇は労働者の請求によることから、労働者の請求なしに有給休暇を消化させることは出来ませんので、このように取得する場合には労働者の請求が必要となります。
  2. 半日の代替休暇(4時間)と残り1時間分は賃金(時間外手当)として割増賃金50%で支払うことができます。
  3. 代替休暇は時間外労働が発生した月の翌日から2ヶ月以内に取得することとされているため、翌月の60時間超時間外労働から算出される代替休暇と合計して取得することも可能です。(参考⑥参照)

ここに注意!
代替休暇を取り入れる際には労使協定が必要となります。労使協定には、休暇時間数の算出方法や取得可能期間など、細かくルールを定める必要があります。労使トラブルにならないよう、ルールを明確にし労働者にも周知しましょう。

最後に

2010年年4月に働き方改革の一環として「法定割増賃金率の引き上げ」という改正労働基準法が施行され、施行後すぐに大企業に対しては適用を開始、中小企業には猶予期間が設けられていた法改正が、ついに2023年4月から施行となりました。
業種によって60時間を超える残業が多い企業は特に、よく注意していただき、この法改正を適用していきましょう。同時に、従業員の健康を配慮する意味合いでも残業時間の削減に向けた取り組みを行いましょう。
弊社では人事労務管理給与計算業務経営に関するご相談をお受けしております。ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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