2021年10月以降の最低賃金額改定について
自分が働いて得るお給料、正しい金額をもらえているのか、高いのか低いのか、考えたことはありますでしょうか。働く人すべての人に関係する「最低賃金」、これをきちんと理解することで労働に対する最低限の対価を得ているのかを確認する必要があります。「最低賃金」は毎年10月頃に更新されます。特に事業主の皆さんは、「最低賃金」をしっかりと理解して労使トラブルや罰則の対象とならないように気をつけましょう。
最低賃金制度とは
まずは、最低賃金がどういうものなのか、定義や種類、対象となる労働者などの詳細をみていきましょう。
定義
「最低賃金制度」とは「最低賃金法」に基づき国が賃金の最低額を定めたもので、1人以上の従業員をもつどんな使用者でも、最低賃金の金額以上の賃金を労働者に支払わなければいけないとする制度です。
「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」
最低賃金には、2種類の定めがあります。「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」です。
- 地域別最低賃金
都道府県ごとに定められた最低賃金で、年齢や正社員、契約社員、パート、アルバイト、嘱託などの雇用形態に関わらずすべての労働者に適用されます。 - 特定(産業別)最低賃金
特定の産業を対象に定められた最低賃金で、「地域別最低賃金」よりも高い金額となります。
例)北海道→乳製品製造業、愛知県→自動車小売業など
「特定(産業別)最低賃金」は特定地域内の特定産業の基幹的労働者に適用されます。この場合の基幹的労働者には、18歳未満または65歳以上の労働者、その他該当産業に特有の軽易な業務を行う労働者などは含まれません。
この2つの最低賃金が同時に適用される労働者の場合、使用者はどちらか高いほうの最低賃金額以上の賃金を支払うことになります。
派遣労働者の場合の最低賃金
都道府県をまたいで派遣される派遣労働者の場合、派遣元ではなく派遣先の都道府県の最低賃金が適用されます。そのため、派遣会社の使用者は、都道府県をまたいで派遣する場合、派遣先の事業場に適用される最低賃金を必ず確認する必要があります。
対象賃金の範囲
「最低賃金」には含まれる賃金と含まれない賃金があります。労働者に毎月支払われる賃金のうち、基本的な賃金のみが対象となり、残業代やボーナスなどは対象外となります。
最低賃金の対象とならない賃金
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
※項目:厚生労働省HP引用
最低賃金の減額の特例
使用者が都道府県労働局長の許可を得ることによって、個別に最低賃金の減額の特例を受け、雇用機会を広くし、様々な労働者を受け入れることができます。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
※ 項目: 厚生労働省HP引用
最低賃金の確認方法
地域別最低賃金
地域別最低賃金は、各都道府県ごとに、時間額で定められています。
※令和3年10月に改訂された地域別最低賃金の詳細は厚生労働省HPでご確認下さい。<該当ページ>
特定(産業別)最低賃金
特定最低特定(産業別)最低賃金は令和2年9月1日現在で、全国228件の最低賃金が定められています。それらは、基本的には時間給で最低賃金が定められていますが、一部、時間額と日額の両方で設定されています。
※令和2年度特定(産業別)最低賃金の審議・決定状況は厚生労働省HPでご確認下さい。<該当ページ>
最低賃金の計算方法
- 固定給の場合
- 時間給の場合 時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 日給の場合 日給 ÷ 1日の平均所定労働時間=時間額 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 月給の場合 月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間=時間額 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 基本給が日給で各手当が月給の場合は、それぞれ日給の場合・月給の場合の計算方法で時間額を算出したものを加算し算出した時間額を最低賃金と比較します。
- 出来高払制の場合 基本給(保障給)と歩合給でそれぞれ時間額を算出し、それらを加算して算出した時間額を最低賃金と比較します。歩合給は その算定期間における総労働時間で除して算出される時間額を最低賃金と比較します。
最低賃金と助成金
最低賃金制度は、働き方改革の一環として、このように取り組み目標が掲げられています。
「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す。このような最低賃金の引き上げに向けて、中小企業、小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図る。」※厚生労働省HPより抜粋
最低賃金の引き上げを支援をする「業務改善助成金」を利用しましよう。
①企業内の最低賃金の引き上げと②生産性向上のための設備投資を行うことが要件となります。生産性が向上するだけでなく、労働条件の改善を図る絶好の助成金となります。さらに現在の新型コロナウィルス感染症の影響により、令和3年8月から特例的に要件の緩和・拡充が行われています。
助成金に関するご相談は、阪神労働保険事務センターまでお気軽にお問い合わせください。
最後に
労働者の労働の対償として支払う賃金は、雇用契約においてこれらの最低賃金を下回る金額となることは認められていません。最低賃金を下回る金額で支払いがされていることが発覚した場合、罰則(罰金50万円以下)が設けられています。さらには下回っている部分の未払い賃金を最長5年分(当分の間は3年分)さかのぼって支給しなくてはなりません。従業員の賃金が最低賃金を下回っていないか、最低賃金の改定をきっかけにチェックし、労使トラブルや不要な労務が発生することを未然に防ぎましょう。
また、今後も最低賃金の引き上げが行われる可能性が随時あるため、「業務改善助成金」等の国の支援を上手に活用して、労働環境改善にも取り組んでいきましょう。